2011年01月07日
ミンボーの女
監督:伊丹十三/1992年/日本
『 飢餓海峡 』を見た後、無性に日本映画熱が湧き上がってしまった。ヤクザ映画が好きなので、古いシリーズ作品などをまとめて見ようかと思っていたはずなのだが、なぜか伊丹十三監督の『ミンボーの女』を見ることに。
この映画はタイトルのとおり「民事介入暴力」をテーマにしている。そして、主人公は普通のホテル従業員だ。よくあるヤクザ映画なら主人公は警察かヤクザのどちらかで、そこには「ヤクザは一般市民には手を出さない」という前提があり、その任侠の美徳を1つのリテラシーにしてたりする。しかし、この映画ではヤクザを単なる迷惑な外敵としてしか描いていない。
ヤクザは記号的なキャラクターとして描かれており、その悪徳さだけが戯画化されている。この身も蓋もなさが、伊丹監督が実際にヤクザに襲撃されるきっかけを作ったのだろうということは容易に想像できる。逆に言えば、この単純な構造ゆえに、映画としてはちょっと物足りないところもあった。
その一方で、この映画を「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」の解説という視点で見てみると、極めて優れた教材映像になっていることに気づかれる。ストーリーの構成は明快で、記号的なヤクザがパターン化された嫌がらせを繰り返す。その一つひとつに一般市民はどのように対処していけばいいのか? その方法がエンターテイメントを通じてわかりやすく描かれているのである。
携帯小説のヒットが示すように、わかりやすさが人の関心を引くひとつの動機となっている今の時代、彼の作品のわかりやすさから学べることは多いように思った。そういえば、葬式を丁寧に描いた『お葬式』なんてのもあったな。伊丹作品を見返してみよう。
Posted by Syun Osawa at 01:37