bemod

2012年01月21日

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

玲/2010年/幻冬舎/四六

ステレオタイプの夢(例えば、スポーツ選手、芸能人など)に向かって努力しても、ほとんどの人は成功することができない。にも関わらず「夢をあきらめないで!」という善意の応援を胸に、夢に向かって必死で努力を続ける人がいる。その人の行い自体は美しいことなのかもしれないが、そこには才能の壁が立ちはだかっており、どれだけ努力しようとも夢は夢のままに終わるのが現実というものである。その現実の過酷さに打ちひしがれることになる前に、「やってもできない」という事実を受け入れ、考え方を転換することでこの過酷な日常を生き抜いていこうというのがこの本の主旨である。

まぁ…納得。

ずいぶん前に読んだ岡田斗司夫『 プチクリ 好き=才能! 』に近い印象を受けた。僕などはマンガ家を目指したが才能が無く挫折したというステレオタイプな挫折の経験を持っているため、この本に書かれていることは痛いほどわかる。ただ、それでもスッキリしない部分が残ってしまうのは、僕が生きるということに対してこの著者ほど積極的でない(もしくは当たり前の前提として置いていない)からかもしれない。

生きるために市場原理を受け入れ、それに合わせて自分の考え方を最適化させていくのはまったく正しく、その通りとしか言いようが無い。しかし、合理的に生きれば生きるほど心は空虚になっていくという人もいるのではないか。僕はそこまで極端な考え方は持っていないし、仕事などはかなり合理的にしているつもりだが、それでも残るこだわりみたいなものが「生きる」ということの要因になっていたりもする。そしてそれはかなり心の根元の部分にあり、それを変える事はなかなか大変だと思う。

Posted by Syun Osawa at 23:34