bemod

2006年08月31日

プチクリ 好き=才能!

岡田斗司夫/2005年/幻冬舎/四六

プチクリどういう理由でこの本は書かれたのだろう?

書いている内容はだいたい共感できる。ネット上には「好き→才能」という捉え方をして批判しているものもあるが、同書が掲げる「プチクリ」はサブタイトルどおり「好き=才能」なのであって、当然「才能=好き」でもあるのだ。これはそのとおりだと思うし、同時にだから何なんだ? とも思う。

オタク・イズ・デッド 』であの頃のオタクを精算し、「プチクリ」を宣言…というのはわかるんだけど、言ってる事があまりに普通なのでやや当惑した。もしも岡田さんが講師を勤めている美大の学生に向けて書かれた本なんだとすれば、学生に夢を与えたいという思いがあったのかもしれないが。

ともかく、冒頭に岡田さんが自分の才能について

私がかなり自身があるのは「人の才能を見抜き、やる気を出させる」才能です。

…と書いているように、この本は「やる気を出させる」本なのであって、プロクリへの当てこすりではないのだろう。実際に、中盤には賞に応募せよとか言ってるし、そういうものを根本的に否定しているわけでもない。大手出版社の編集者に見初められなければ小説家になる道はないというような考え方を改めよ、と実に普通のことを言っている。

そういう意味でも、学生へ向けられたメッセージと読めば、実にありふれた自己啓発本と捉えることができる。それこそ『 企画の教科書 』(ロイ渡辺/NHK出版)とか『 ビジネスコールドリーディング 』(石井裕之/日本実業出版社)のような「誰でもちょっと考え方を変えれば上手くいく」的な本を岡田さんが書いたと。ただ、そのへんの話は読んでも「ふーん、そうだよね」くらいにしか思わないんだなぁ。

読み物としては、最後の章の「プロ社長を辞めた理由」あたりの内容が面白い。ガイナックスはプチクリの延長線上に綺麗にのっているし、肩書きなんて名乗った者勝ちというのもすごくよくわかる。

Posted by Syun Osawa at 00:07