bemod

2004年08月13日

エイベックス・ドリ〜ム 2

前回の続き

エイベックスは誰が作った会社なのか?

浜崎あゆみは松浦氏が辞表を提出したことを受け、「松浦専務の辞任はエイベックスの終焉」であるとコメントした。なぜか? もしも松浦氏がレンタルCD屋をやっていなければ、エイベックスという会社は生まれていなかったからである。

『エイ・ドリーム』によると、松浦氏は大学4年生のとき、当時アルバイトをしていたレンタルレコード店のオーナーの勧めと父親の援助により、横浜郊外に自分の店をオープンさせている。水草氏の文章からは読み取れなかったが、おそらく全国チェーンのレンタルレコード店のフランチャイズとして、自前の店をオープンさせたということだろう。

松浦氏はレコードからCDに移行していく時代背景を尻目に、自分の店にアナログ12インチのユーロビートを並べた。そして、それが徐々にクチコミで広がり、話題になる。一方その頃、八王子で同じくレンタルレコード店を経営していた男がいた。鈴木壱成氏である。鈴木氏は松浦氏の店を訪れたとき、彼がユーロビートのレンタルで成功していることに心を引かれる。鈴木氏は松浦氏に熱烈なラブコールを送り、その結果、彼らは町田でユーロビートのアナログレコードを全国のレンタルレコード店に卸す事業を始めることになった。これが「エイベックス・ディー・ディー株式会社」(エイベックスの前身)である。

鈴木氏はエイベックスの創設者であり、初代の代表取締役社長である。しかし1994年1月、突如退任し、それまでご意見番としてエイベックスを後から支えてきた依田氏が会長兼社長に就任した。今回の騒動では、アクシヴの千葉氏に対して依田氏を中心とする役員たちが解任動議を出したわけが、それより前にも何となく似通った事件があったわけだ。ちなみにエイベックスと言えば経営の依田、製作の松浦というイメージが強いが、エイベックス設立当時、依田氏は非常勤のご意見番的立場にあったらしい。

松下やホンダの創設者は今もってなお尊敬される存在であるのに、松浦氏を引っ張り出してエイベックスを立ち上げた鈴木氏の存在は今や過去のものとなっている。現代の何というか…切ない部分だ。たしかに依田氏がエイベックスを飛躍的に大きくしたことは間違いない。水草氏も彼の英語による交渉術がなければ、海外のレーベルとの契約はここまで上手く運ばなかったと記している。

ネットなどでは依田氏が社長を退いたことで、松浦氏が社長になるのでは? という憶測が飛び交っており、また彼が社長になったら経営は無茶苦茶になるとも言われているようだ。しかし『エイ・ドリーム』によると、松浦氏が経営していたレンタルレコード店の売り上げは、全国のグループ店の中でNO.1だったそうだ。東証一部の会社と場末のレンタルレコード屋を比べるのは変だけど、大学生のときに自分の店をオープンさせ、売り上げNO.1を誇った松浦氏にだって人並み以上の経営の才能はある。そしてその才能が、大会社となった今でも十分に発揮される可能性がないわけでもない。もちろんそれは、彼が同書に書かれているような「町田スピリット」なるドリームを今も心に燃やし続けていればの話だが。

つづく

Posted by Syun Osawa at 23:12