bemod

2005年11月22日

遊就館「常設展」&「日露戦争百年展」

遊就館/靖国神社

遊就館「常設展」&「日露戦争百年展」戦争画を求めて靖国神社の遊就館へ。遊就館にはロケット特攻機「桜花」とか人間魚雷「回天」とか艦上爆撃機「彗星」とかがデーンと展示されていて、宗教施設の中にあるとは思えないド迫力。イギリスの帝国戦争博物館が教会の脇にあったらビビるのと同じ。

常設展では『私達は忘れない!』というドキュメント映画が上映されていて、その内容のエモーショナルっぷりが凄かった。安倍晋三さんを連想させて、何とも何ともって感じ。歴史に対する印象ってのはその語り方によっていろいろ違うもんですねぇ。神戸製鋼が根性一辺倒のラグビー界に新風をもたらしたのもそうだし、『 ドキュメント戦争広告代理店 』なんかでも言及されているとおり、今の時代は感情のもっと上のところで何やらがおきてるのかなと思う。

武器&兵器だらけの常設展なので、さぞかし戦争画もたくさんあるだろうと思ったら、有名なのは日露戦争百年展にあった東城鉦太郎《三笠艦橋の図》くらい。あと、常設展のほうで田村孝之介《佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す》の一部が拡大されて名前も付されずに紹介されていた。藤田嗣治も宮本三郎も中村研一も小磯良平も向井潤吉も清水登之ない。残念。現物を見ることができたのは以下の作品。

【常設展】
作者不明《ハルハ河畔敵戦車郡を激撃する機動九〇野砲》
佐藤幹児《「ヒ八六船団」は還らず》
作者不明《陸軍海上挺進戦隊の活躍》
山崎文夫《遺恨の旆旗焼》
深沢省三《蒙古軍民協和の図》
齋藤文人《日米空中戦の図》
藤瀬韶國《Z旗を掲げる空母大鳳》
藤瀬韶國《特攻機米韓突入図》
清水多嘉示《重慶夜間爆撃行》
藤瀬韶國《航空戦艦伊勢》
古島松之助《半壁山の戦》

【日露戦争百年展】
辛島一誓《永沼挺進隊奮戦の図》
武藤夜舟《近衛歩兵第三聯隊日露戦役藩家台附近戦闘図》
満谷國四郎《軍人の妻》
今村《鴨緑江渡河》

全部知らない作品。常設展の作品は戦後描かれたものも多いのかな? 清水多嘉示《重慶夜間爆撃行》には「紀元二千六百年奉祝美術展出品」と書かれているので当時のものなんでしょう。気に入った作品は今村《鴨緑江渡河》という日露戦争の作品。朝もやの中で日本軍がゾロゾロ歩いていて、河の向こう側で何かが燃えている。漂う雰囲気がいい。あと、武藤夜舟《近衛歩兵第三聯隊日露戦役藩家台附近戦闘図》は珍しく日本画で、川端龍子さんの戦争画を思わせる格調高さみたいなものがあった。ただ全体的には印象薄。売店に置かれていた軍艦や戦闘機のプラモデルの表紙に描かれている絵の方が僕的にはインパクトがあって、そちらの方に気持ちは持っていかれた。タミヤとか大日本絵画あたり。

関係ないけど、最も多くの戦争画を保有している東京国立近代美術館は、常設展で戦争画を毎回2、3点ずつ小出しに公開していてる。これが気に入らない。しかもわざわざ「今回がはじめての出品です」と書いてたりする。アジアへの配慮というのを盾にした高度な営業戦略の一つですよ、これは…。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:21