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2006年08月03日

ポスターの時代/戦争の表象

2006年6月24日/東京大学本郷キャンパス・武田ホール

ポスターの時代/戦争の表象東京大学大学院情報学環長の吉見俊哉さんによる「第一次世界大戦プロパガンダ・ポスター コレクションデジタル・アーカイブ公開記念シンポジウム」というイベント(タイトル長すぎ)。

吉見さんは今年の2月に「 戦争と表象/美術 20世紀以後 」というイベントも主催されており、戦争と芸術にまつわる話題を提供してくれる貴重な方である。今回のイベントでは、東大の旧新聞研究所から受け継がれた第一次世界大戦のプロパガンダポスター(アメリカが中心)のコレクションを軸に様々な視点から発表が行なわれた。

中でも川畑さんの発表は、外務省から東大に渡されたというプロパガンダポスター群がどのように収集されたのかという経緯を追っており、かなり面白かった。というのも、このイベントだけ見るとポスターを収集したのは東大、ないしは外務省という風にイメージしてしまうのだが、実際には個人の趣味で収集されたものを外務省が引き受けているのだ。国がプロパガンダ研究のために、率先して収集していたわけでも何でもない。この点について、川畑さんは厳しい指摘をされていた。もしかしたら、ポスター以外のアーカイブも日本の場合って、個人のコレクターの力に寄るところが大きいのかな?

吉見さんはジェンダー推しということもあって、若桑みどりさんと北原恵さんの二人がジェンダーの視点からプロパガンダポスターについて発表されていた。戦争と女性の関わりは僕自身も興味があるので二人の発表は興味深く、特に北原さんの「女の子」としての戦争支援についての言及は、今の問題に展開できる話としてはかなり良かった。

ほかにも、アニメ作家のウィンザー・マッケイがプロパガンダ活動に参加してた話とか、当時のアメリカが記号として「国旗」「白頭鷲」「自由の女神」を国民に植え付けていたのに対し、日本でも「日の丸」「桜」「短刀」などのイメージを植えつけており、イデオロギーとは関係なく似たようなプロパガンダが展開されることとか、戦争と芸術 の勉強として学ぶべきところが多いイベントだった。

そもそもプロパガンダってのは、共犯意識を高める装置なわけで、例えば腹を減っている人間に「レストランのポスター」を見せてこそ効果があるわけだ。プロパガンダポスターだけを見ていると、無理やりに国民に何かを強いているような印象も受けたりするが、その前提として国民がポスターに描かれているようなことをもともと前意識として持っていることも、忘れてはいけないところなんだと思う。たぶん。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:44