bemod

2006年10月01日

社会主義とは何だったか

塩川伸明/1994年/頸草書房/四六

社会主義とは何だったか「社会主義と全体主義」が収録されていた『 ソ連とは何だったか 』(頸草書房)と対になっている本だったので、ついでに流し読み。かつてマルクス主義者や広義の左翼だった人(宮崎駿さんも含まれる)が、ソ連崩壊で抱えた虚脱感からどのように立ち直るか? みたいなところに本の主眼があったと思うので、そういうのが何一つ無い僕には本当に流して読んだだけになってしまった。ちなみに、宮崎駿さんの立ち直り方を知りたければ漫画版『風の谷のナウシカ』(徳間書店)を読めばよい。

そんなわけで、社会主義というよりは資本主義を見つめるためのもう一つの視点としての社会主義を扱った「社会科学と思想」とか「転向論再考」あたりの文章が僕の興味にもピッタリときて面白かった。社会主義はもちろんのこと資本主義も完璧ではあり得ない。だからといって、第三の道は示されていない。世間に漂う閉塞感とやらは、恐らくこうした状況に由来しているのではないかと思うのだがどうだろうか。

もう一点、社会科学のタコ壷化と思想性の衰弱を指摘し、現代思想家の論を援用して何かを語ろうとする学者に対して異議を唱えている部分も興味深い。

一番安易な対処法は、様々な領域における「最先端」「最新流行」の言葉に飛びつき、流行語を振り回すことによって、自らが知的ファッションに敏感であることを堅持し、それをもって「脱領域の知性」の証とするような行き方である。こうした傾向は今日隆盛を極めているが、何ら解決にはならない。

僕がおっさんになってきたために、こういう言葉に響いてしまうのだろう。特に「何ら解決にはならない」というところ。学者の仕事というのは最終的に人類の最大幸福をめざすために存在すると思うし、それは経済のシステムも同様だと思っているので、そもそもそうした前提を放棄した学者に対して共感することができないのだ。

ジャパニメーションは何故敗れるのかで、大塚英志さんが「固定されたイデオロギー」という言葉を使用して、引っかかったことが、塩川さんの本を読むと納得する。固定されたイデオロギーとは「マルクス主義」のことだろうか? 違う。では戦後民主主義か? 何だそりゃ?

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:33