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2008年02月05日

特集 国吉康雄 ― 寄託作品を中心に

2008年1月2日−3月20日/東京国立近代美術館 ギャラリー4

特集 国吉康雄 ― 寄託作品を中心に以前、東京国立現代美術館のメルマガで国吉康雄の展示をやるというニュースが掲載されていたので、てっきり国吉康雄展をやるのだと思っていたら、常設コーナーの特集展示だった。

とはいえ、有名な作品も何作か展示されており、《誰かが私のポスターを破った》《ふたりの世界》《カーニヴァル》《サーカスの女玉乗り》などがあった。

戦争と芸術 関連では《誰かが私のポスターを破った》は外せない。プロパガンダポスターに描かれた手が手前の女に絡み合って息苦しい。タバコを持つ手、目が哀愁を帯びている。国吉はタバコを持つ女性を多く描いたが、彼にとって女性の持つタバコというのは社会進出を果たした女性の象徴だったのだろうか?

もう一点、《二人の世界》も僕の中で重要な作品である。

遠くに荒廃した街が描かれ、手前のビーチではアメリカ人と思わしき3人の女性が歩いている。3人に笑顔はなく、少し不満そうな表情を浮かべている。山口泰二『 アメリカ美術と国吉康雄 』では、この絵は分断された日本とアメリカであると読み取っていた。第二次世界大戦が始まる直前、日本人としてアメリカで暮らす国吉にとって、この分断はとても辛いものだったに違いない。

この画について、自分なりの解釈を付け加えてみる。よく見ると、手前のビーチと奥の島の間にあるものは、海を示しているように見えるが、草原のようにも見える。正確に言えば、草原であった場所が海になっているというイメージ。一度草原を描き、その後で海を描いたのだろうか。左にある木は地上のものであるにもかかわらず水に沈んでおり、その横に車輪が一つ浮いている。このことから、二つの世界の間の海は、もともと陸続きであったと考えることが自然であろう。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:46