bemod

2008年09月02日

スカイ・クロラ

監督:押井守/2008年/日本/新宿ミラノ

スカイ・クロラ宮崎駿監督『崖の上のポニョ』はあまりに子供向けの作品なので、おっさんが観に行くのはちょっとキツい(そうでもないらしいが…)。そこで、大人でも(正確には大人のオタクでも)安心して観ることのできる『スカイ・クロラ』を観に行った。

劇場で押井作品を見たのは2004年に劇場公開された『 イノセンス 』以来4年ぶり。監督いわく、今回の映画はこれまでの演出技法をすべて捨て去って制作したそうだ。

結果的にはいつもの押井節だったわけだけど、『イノセンス』の頃よりは説教臭さがずいぶん消えていたように思う。攻殻以降の押井作品(脚本参加も含む)は思わせぶりな語りを自重しなくなっていて、誰もそれを止めないもんだから一部の熱狂的なファンや批評家に受け入れられた一方、僕のような浅いアニメファンからは説教臭いと思われるようになっていたようにも思う。

今回は原作のストーリーが強かったこともあって、押井監督の職人としての腕前が見られたような気がして少し嬉しかった。とはいえ、そもそも原作自体が押井のベクトルと同じ方向を向いているために、『うる星やつら』などで見せたアクロバティックなハンドルさばきを見ることまではできなかった。その点は少し残念。

ループの話については、東浩紀さんが『 ゲーム的リアリズムの誕生 』で書いているような路線なんだろう(たぶん)。終わりなき日常というか、ループする世界をどう生きるかというテーマは、結局のところ古くて新しいテーマであり、これはこれで一つのジャンルになっている。つい最近亡くなったソルジェニーツィンの『イワン・デニソビッチの一日』でも描かれた脱出不可能な辛い日常を主人公がどう生きるかという問題は、『セカイ・クロラ』の永遠の子供(キルドレ)が直面する問題でもある。

ネタバレになるので言わないけど、繰り返されるループの中でのささやかな抵抗のようなものが最後に少しだけ見えてくる、それが希望ということなのだろうか? そして、『ひぐらし』に例えて言うなら「何もかもが鮮やかにみえてすぐに消えてしまう〜」って感じ?

今回は戦闘シーンで全面的に3Dが使用されていた。しかもセルシェードではなく、描き込みの多い背景画に近いレンダリングがなされている。この手法だと、どうしても2Dの画面で3D部分だけが浮き上がって見えてしまうため、GONZO系の作品(『青の6号』他)などを見慣れていないと少し違和感を持ってしまうだろう。僕も最初のうちはちょっと気になっていた。

ところで、僕がI.G作品の映像で一番好きなのは、リアル系のキャラの生々しい動きという伝統的なアニメーターの仕事だったりする。ストーリーでもなく、最先端のテクノロジーでもなく、結局はこういうところで満足してしまうところが、いつまでたっても成長しないアニオタ(僕)の問題意識の低さを象徴しているなw

Posted by Syun Osawa at 01:11