bemod

2007年04月19日

ゲーム的リアリズムの誕生

東浩紀/2007年/講談社/新書

ゲーム的リアリズムの誕生一部のオタク界隈をにぎわせた『 動物化するポストモダン 』の続編。前著を読んだ頃は『 郵便的不安たち 』や『 網状言論F改 』なんかも含めていろいろ熱かったんだけど、今回は東さんがコミケで売っていた 同人誌 の延長上に綺麗にのった話だったので、スムーズに読み終えてしまった。

タイムリープ作品の変遷を発展させて、ゲーム的リアリズムの誕生として読み直す試みは刺激的だと思うし、列挙されていた作品に対する言及もなるほどと思わせる。特に今回はオタク全般というよりは、ライトノベルやビジュアルノベルを軸にした新しい文芸評論の試みといったところが前面に出ており、僕自身はただただ納得するほかなかった。

ただ、どこか熱気がないんだよなぁ。この先に何か面白い何かがありそうな感じがない。その理由は上記のような文芸評論の試みとして、環境分析を提唱しているからかもしれない。

環境分析とは、いわば、作家が言いたかったこと、作家が語ったことそのものを「解釈」するのではなく、作品をいちど作家の意図から切り離したうえで、作品と環境の相互作用を考慮し、作家にその作品をそのように作らせ、そのように語らせることになった、その無意識の力学を「分析」する読解法である。

ここからさらに踏み込んで作家を越えて超えてアッパーな方向に進んでくれたら、楽しみは広がるかもしれない。東さん自身、年齢的にもそろそろアッパー系に進むかダウナー系に進むかに分かれる頃だと思うし、少なくともこの本や最近出版された一群の本たちはその分岐点になることは間違いないだろう。

Posted by Syun Osawa at 23:13