bemod

2009年02月22日

おまえが若者を語るな!

後藤和智/2008年/角川書店/新書

おまえが若者を語るな!なんか凄い本だった。その言葉の後に思わず(笑)ってつけそうになったわ。

何て言うか…著者が昨今の若者論に対して若者の立場から異議申し立てを行ったという意味では意義深い本なんだと思う。一見すると、著者は理系であり、科学的な立場から人文系の曖昧さを攻撃しているように見える。そして、それはアナロジーによる科学用語の乱用を指摘したソーカルの『 「知」の欺瞞 』のような振る舞いにも見える。

が、いかんせん斬れ味がよくないというか、棍棒をブンブン振り回して周囲に「何だこいつは?」と思われつつも、それほど脅威に感じてもらえないというか、そういう意味もあって(笑)的なものがどうしてもつきまとってしまった印象だった。というのも、彼は若者論を振りかざす論者達の曖昧な言説について、実証的でないことのみを繰り返し言っているに過ぎず、本来の若者論のあり方はこうあるべきだと著者なりの考えを主張しているわけではないからだ。

この本の中で攻撃されていた東浩紀さんは 早稲田文学 十時間連続公開シンポジウム の中で、この本を読んだことすら言いたくないと言っており、人文知的なものを一方的に無視した著者の主張に反論を加える気も起こらなかった東の気持ちには同意できる。

しかしながら、著者は安易な世代論や若者論によって、傷つけられたり迷走してしまう若者に適切な言葉を届けたいという一心でこの本を書いているのであろうから、彼のとった戦略の是非はあるにせよ、彼の核となる思いそのものには真摯に答えるべきなのではないかと思う。それは香山にしても宮台にしても同じである。

Posted by Syun Osawa at 00:53