bemod

2009年07月17日

批評理論入門

廣野由美子/2005年/中央公論新社/新書

批評理論入門大学の講義をまとめただけあって、とても勉強になった。この本では多くの文学作品を横断しながら批評理論について語るというような批評芸は披露されていない。たった一作『フランシュタイン』という作品について、小説を組み立てる側と批評を行う側から様々な技法を用いて迫っている。

少し前に読んだ山本おさむ『 マンガの創り方 』も高橋留美子の短編作品を徹底的に解剖することで、マンガを描くための具体的な方法を解説するというタイプの本で、今回の『批評理論入門』はこれに似ている。しかも、本書は作品を批評するためのアプローチの仕方についても解説されていて、まさに入門と呼ぶにふさわしい内容だったと思う。

とはいいつつ、ぶっちゃけ僕は『フランケンシュタイン』を読んだことがないのだが、『 読んでいない本について堂々と語る方法 』のロジックにのっとれば、この本さえ読めば『フランケンシュタイン』について堂々と語れてしまう。それくらいこの本では語るための方法について丁寧に書かれている。

小説理論はさておき、批評理論のほうはポストコロニアル批評、ジェンダー批評、脱構築批評などいろいろな方法があって、アプローチの方法でいかようにも語れてしまうことを痛感させられた。だから批評は慎重に深く掘り下げるべきだと考えるのか、だから何でもありなんだと考えるのかで批評家の作品に対するアプローチって変わるんだろうな。

Posted by Syun Osawa at 01:24