bemod

2009年08月18日

ガンパレード・マーチ(全12話)

監督:桜美かつし/2003年/日本/アニメ

ガンパレード・マーチ ― 新たなる行軍歌ゲームのアニメ化なら必ず面白いというわけでもないんだな…。しかも、ガンパレって元はエロゲなんだと思ってたら、違うのね。

エロゲ原作のアニメは『 AIR 』とか『 ひぐらしのなく頃に 』など今までハズレが少なかったし、『ガンパレードオーケストラ』とかいう似た作品も出ているので、そこそこ人気作品なのだろうと思って観たわけだ。そしたら、実はこの作品、そもそもエロゲじゃなかった。どうやら『サクラ大戦』あたりの系譜にのってくるような作品らしい。

ゲームの話はさておき、アニメを見る限り、作品の世界観というか物語の駆動している装置そのものはそのまま『ヱヴァ』だった。地球を襲う謎の生命体を高校生が撃退する日々が続いているという世界観。『ヱヴァ』の使徒は有限だが、こちらの幻獣は有限であるようには描かれていない。そのため、幻獣に対する言及は少なく、謎解きの要素もほとんどなかった。

ようするに、非日常(戦時下)の世界でも人間は泣いたり笑ったりして生きるよ…みたいな、高校生達の青春群像劇だったわけだ。個人的にはもう少しセカイ系的な怪しさとか、軍国主義を想起させるようなイデオロギーが絡まってくるような展開が欲しかった。だって、戦場でクラスメイトが一人死ぬ以外は、本当に本当に普通の恋愛アニメだったのでw

以下、感想メモ。

第01話 プレイバック

予備知識ゼロで見始める。何だかよくわからない敵がいて、それらに少年少女が迎え撃っている。『エヴァ』以降のセカイ系的想像力によってつくられたゲームのアニメ化なんだろうか? いや、ちがうな。結構ベタに日本が戦後に作り上げた黄金パターンなんだろうね(たとえメタ的に設定をいじくったとしても…)。ともかく、少年少女が戦っているという状況を見るにつけ、誰が彼や彼女達を戦地に向かわせているのかが気になり始めた今日この頃。

第02話 勝手にしやがれ

芝村登場。彼女のように少し影がってあって、しかも強い戦闘系美少女はこの手のアニメにかかせない。瀬戸口という男のナンパ話とかもあって、ゆるーい感じで話は展開。それぞれのキャラクターがそれぞれの持ち味を順番に出しあって、何となく楽しい…みたいな雰囲気は萌えを踏まえた作品の特徴でもあるんだろうけど、僕はちょっと苦手かもしれない。

第03話 サマータイムブルース

高校生くらいの男女が徴兵制によって戦地へ送られていることを知った。すごく瑣末な突込みをすると、マシンの操縦って普通は熟練の技術が必要なわけで、あまり若い人が向くとは思えない。今回は少しだけ戦いに翻弄される若者の日常部分を少しだけ描いていたが、深さはなかった。ストーリーもこれといった進展はなし。

第04話 二人でお茶を

速水と芝村がコンビを組むことに。芝村は自分のコミュ力の無さを改善しようとは思っているらしい。でも二人の息は合わず。シンジとアスカかよ…という、エヴァっぽい流れがありつつも、ノリは軽め。

第05話 枯葉

壬生屋未央が死んだ。この回はそれだけの回。重要な役どころではなかったけど、個人的に好きなキャラだっただけに残念。ミドルポイントまでは少しあるのに、先に死なせたということは、この後にも何か大きな転機が用意されているのかな? ところでこの作品、今までの回だけを見る限りでは、エヴァの戦闘シーンと学園生活のみを抽出しただけのフェティシズム作品と言われても仕方がないくらいの内容ですが…。

第06話 君去りし後

この作品にマジレスは禁物なのかもしれないが、高校生が戦闘を繰り返している状態にあって、その高校生達は出撃前は普通に街の学校へ通っている。そして、街では普通に一般人が生活を営んでおり、街に荒廃した様子は無い。うーむ、よくわからない状況だ。

後半にまたまた戦闘シーンがあり、ここで上司の冷静な指示に対して、高校生戦士が高校生ゆえの苛立ちを爆発させるシーンがある。軍人がああいう風な取り乱し方するのは明確に変だし、それが高校生ゆえということであるのなら、この設定は明らかに中二病について一切の検討を加えることなく商品化したと思われても仕方がないだろう。そうじゃないことを祈りたいが…。

第07話 長い夜

エヴァに加えて、ナウシカの要素も入ってる。どう考えても、幻獣の群れの中を心を無にして突っ切るところはこの回で最も重要なシーンだったはずだ。にも関わらず、画としてはほとんど動かず、会話劇で長々と粗筋を説明させている。予算や日程などの関係もあるだろうし、限られた人員で作品を作らざるをえない今の商業アニメの世界においては、これはやむをえないことなのかもしれない。しかし、監督の本意ではないだろう。

第08話 四月になれば彼女は

速水を一方的に恋する女の子が登場。歳をとってるのにこういうアニメを見続けると、こういうキャラクターに激しく既視感をおぼえてしまう。あと、この手のキャラクターによって、芝村との間に別の恋愛感情が芽生えるとかも…。では、そこに既視感をおぼえてしまう人のために、少し変化球を加えたキャラクターを登場させないといけないのかというとそうではない。大人になってもこの手のアニメを見続けている僕が悪いのだw

それにしても、幻獣との戦いと恋愛のシーンが完全に切り離されてパラレルに存在しているという、わりと最近のアニメ作品によくある状況は何とかならんのか。これでは、AVのドラマ部分とセックス部分の完全分離状況と少しも変わらないぞ。

第09話 君にこそ心ときめく

ストーリー終盤の第09話にまさかのキャラクター紹介。スポンサーか誰かに「もっとキャラクター性を強く出さないと売れないだろ」とか言われたんだろうか? この回は速水と芝村を周りのみんながくっつけようと画策する話がメイン。オチとしては、何だかんだ上手くいっているという、超ぬるい展開。さすがにもう少しドラマ欲しいよね。

第10話 悲しみよこんにちは

世界の存亡がかかわる幻獣の襲来に対抗するべく組織された高校生の軍隊。彼らは学校に通いながら、軍隊の活動をしている。この時点でトンデモなわけだけど、エヴァの二次創作的な方向性だとすればそれはそれなんだろう。ただ、今回は学校で文化祭の出し物としてクラスで劇をやるという回で、日常を描くにもほどがあるだろうというリアリティのなさ。ここでいうリアリティのなさというのは、戦時下でも人は笑うというリアリティとは根本的に異なる、ただの日常劇が繰り広げられていることに起因している。唯一、後半の幻獣襲来と劇中劇の絡ませ方は、演出としては悪くなかったと思う。

第11話 言い出しかねて

残り1話にして、クリスマスパーティーとか…。しかも、あまりにもあり得ない純情路線。芝村と速水の恋愛ネタも突然出てきた感じで、この二人の心理描写を丁寧にしないままに、いきなり二人は両想いみたいになっている。設定から逆算すれば、そうなることはわかっているとはいえ、ドラマを描かないままに突然湧き上がったようにお互いの距離が近づく話が挿入されるのはいかがなものか。

あらすじやプロットだけを追いかければ、それなりのストーリー展開に見えるかもしれないが、実際の作品の中には僕の心を湧き上がらせてくれる様なドラマは何もないのだ。また、戦争のほうも中途半端で、彼らは幼いとはいえ軍人であるにもかかわらず、社会的な状況と日常生活との間での葛藤もない。

第12話 さよならを言う度に

最終話だというのに、幻獣との戦いにはほとんど踏み込まず、芝村と速水の恋愛ネタだけを拡大解釈して、それこそが人間にとっては大事だというような「エヴァだって似たようなオチつけたんだから、俺たちもこういう終わり方アリだよな!」的な甘えたお話で終わった。これで見ていた人は納得するのだろうか?

ゲームでやっていた人は、最初からこの作品の世界観なり設定なりを共有していたから、ゲームでは描ききれなかった人間模様のほうをアニメで補完したという事ならば、アニメしか見ていない僕はあきらめるしかない。正直、一生懸命作っている制作の人には悪いけど、さすがに「これはないだろ…」と思った。

Posted by Syun Osawa at 00:09