bemod

2010年03月11日

『G2』VOL.3発売記念シンポジウム「デジタル出版の未来」

2010年3月6日/17:00−18:45/三省堂 神保町店

登壇者は、弁護士・村瀬拓男氏、電子出版社社長・萩野正昭氏、堀江貴文氏、ジャーナリスト・石井光太氏。前に行ったG2のシンポジウム では応答する側だった石井氏は、今回は完全に司会に徹されていた。

この日は、昨日行った東工大シンポジウム の二日目があったのだが、どうせ誰かがYoutubeかニコニコ動画に上げるだろうと思って、講談社のノンフィクション誌『G2』のシンポジウムへ。「デジタル出版の未来」という個人的な関心も高い領域だったこともあって、なかなか面白い話が聞けた(出版界にとっては、面白くない話だが…)。

特に印象に残った話が二つあった。

一つは、弁護士・村瀬拓男氏の話で、国会図書館がアメリカに負けじとデジタル化をすすめており、日本の書籍もデジタル化の波に決して抗えないという話。あり得ない話だと思うが、もしも国会図書館でスキャニングしたデータを地方の図書館を通じて貸し出すとなれば、地方の図書館に買い上げてもらうことで成立していた零細専門書の市場は崩壊するし、ベストセラーの小説も大量に貸し出されてしまうことになる。こんな破壊的なことはさすがにしないだろうが、図書館が最近便利になりすぎていることを考えると(かなり利用させてもらっているが)、出版界を取り巻く困難さはkindleやiPadだけじゃないんだなと実感。

村瀬氏は『熱風 2010年2月号』のグーグル特集にも寄稿していて、そこでは、こうした変化の流れはできるだけゆるやかなほうがいいと書いていた。というのも、もしも、今ある書籍の大部分がデジタル書籍に置き換わったら、収益は半減し、大部分の人が職を失うことになるからだ。出版業界にいる人達の懸念のほとんどはこの点に集約されているといっても過言ではないだろう。ぶっちゃけ情報の共有とか、イノベーションとかよりも我が身のことが気にかかるのは当然である。

よく肯定論者が音楽業界のことを例に挙げるが、宇多田ヒカル「Flavor Of Life」がギネス認定されるくらいのダウンロード数を叩き出しても、音楽業界はやはり斜陽のままである。大手CDショップが苦しんでいるが、書店も同じ苦しみを背負うことになることは目に見えている。

もう一つ、印象的だった話は堀江氏の話で、上の話ともつながる。「だったらどうすればいいか?」ということについて、ホリエモン堀江氏は書店は人の集まる場としての意味が一番重要になると語っていた。自身も小さな書店に出資しているそうで、そこで一番大きな収益を得られるのはやはりセミナーだったそうだ。

僕はこの考え方に完全に同意する。これは、CDショップでも同じなのだが、人が集まるための口実として売り物があるという発想の転換が迫られているのだと思う。例えば、本屋の大部分をコーヒーショップに変えてしまうというのも手だろう。そして、客は店員にコーヒーと読みたい本を注文するのである。さらに、階ごとにイベントスペースが設置され、いつも何かしらのイベントが催されている。店に流れる音楽は、オリジナルのラジオになり、そこでは本を紹介するオリジナルの番組がエンドレスで放送されている。つまり、「その場にいる時間」それ自体にお金が支払われるようにする仕組みで、本はそのオマケ(ライブのグッズ販売みたいなもの)という位置づけに近づいていくわけだ。

途中から僕の妄想になったが、堀江氏は自分の価値を利用して、メルマガを始め、すでに数千の顧客を獲得しているという。このあたりのビジネスに対する感覚というのは素晴らしいと思う。また、この前、ロフトプラスワンでやった東浩紀氏らとのイベントは、堀江氏の有料チャンネル内で放送していた。ustreamで流すのではなく、有料で囲い込んでいる、しかもニコニコ動画でやっている。どれが成功するかはわからないが、今はそうやってハイブリッドにやっていくしかないと、堀江氏は話していて、商売に対する感覚はさすがだなと思った。

デジタル出版の感想ではなく、出版社と書店に関する妄想だな…。

デジタル出版で僕が唯一気に食わないのは、それらの市場を占有しようとしている会社がすべて海外の企業だということだ。これは悲しい。今後、日本にも投入される予定のiPadはエロをやらないらしいので、日本の企業は同系の商品をエロありで推し進めたら、それなりに成功するのではないかとも思う。というのも、iPadの大きさは、電車で何かを読むにはウザいくらいの大きさだが、家でこっそりアイドルのグラビアを見たり、エロ漫画を読んだりするにはちょうどいい大きさだからだ。iPadにできることは、iPhoneでやればいいというユーザーは少なくないが、この点だけはiPadのほうがいいと思うユーザーは多いだろう。ただし男性にかぎる。

Posted by Syun Osawa at 00:18