bemod

2010年08月02日

マンガ統計学入門

アイリーン・マグネロ、ボリン.ファン・ルーン/訳:井口耕二
/2010年/講談社/新書

マンガ統計学入門最近の若い批評家は急速にマジメになっていて、ことあるごとに「統計!統計!」と言うらしい。たしかに景気の低迷が長期化し、先の見通せない状況では、何かの方向性を決める際のリスクを最小限に抑える方策として、統計学が力を発揮するのかもしれない。

少し前に読んだ飯田泰之『 考える技術としての統計学 』で統計について少し興味を持ったこともあって(考える技術として使用することにはあまり同意できなかったが…)、ゼロベースで少しだけ知識を積み上げることにした。

そのための導入本がこれw

統計学入門というよりは、統計学の成り立ちというか統計学史みたいなものがイラスト入りで簡単にまとめられた本、といった印象だった。統計の歴史は僕が思っていた以上に浅く、数式でうんぬんするような統計の読み取り術もピアソンのような天才の職人芸に拠るところが大きいようだ。で、本の最後のほうにようやく出てくるのが標準偏差(テストの偏差値でお馴染みのやつ)。

え? もっとハイテクな数式操作とかあるんじゃないの? 結局、学生時代によく目にした標準偏差のグラフに行き着いてしまってちょっと腰砕け。まぁ…導入本だからこのあたりでオチをつけたのかもしれないけど。

佐々木敦氏が『 ニッポンの思想 』で「東浩紀氏の一人勝ち」といったゼロ年代の言葉には、統計的なものがあまり付随していなかった。テン年代はどうだろうか? 統計的なセンスが今まで以上に問われてくるのかもしれない。

もちろん、その傾向により、飯田泰之『 考える技術としての統計学 』みたいな考え方が増えていくのならば、個人的にはあまり面白い流れではない。僕の場合、オルタナティブは常に僕の知らないところから突然やってきてほしいという甘酸っぱい思いが中心に残ってしまうため、マーケティング理論から面白いものが生まれるいう発想には賛同できないのだ。ただ、そういう中二病患者であっても、リスクを回避するための予防線は必要である。だから今は、引き裂かれた気持ちを抱えながら、地味に統計学を学んでいくという二重の戦略を続けていくしかない。というための導入本だった。次は、入門本を読もう。

Posted by Syun Osawa at 21:15