bemod

2011年03月04日

池上彰の分かりやすく伝える技術

池上彰/2009年/講談社/新書

池上彰の分かりやすく伝える技術わかりやすい文章の書き方が、具体的な例を挙げながら示されていて、とても参考になった。例えば、「このように〜」といった上からの文章の繋がりを大つかみまとめる雑な方法のわかりにくさとか、乱用されやすい「が」の使い方など。生まれながらにしてわかりやすい文章を書く文系クラスタの人なら当然身につけているような技術を、あえてわかりやすく書いてくれているので、文章ベタな僕には大変ありがたい。

著者の池上彰氏は今やテレビでは知らない人がいないほど有名なコメンテーターで、テレビでもわかりにくいニュースを、わかりやすく解説する番組をいくつもやっている。そこで用いられる技術は複雑な情報をどう整理し、身近な言葉に置き換えていくかというものだ。この本では「どのように整理するか?」という要約力に関しては詳しく書かれていないが、「ある程度整理された情報を、どのように提示していくか?」というプレゼンテーション力については詳しく書かれている。この部分はとても参考になった。

思想家の東浩紀氏もこの技術に優れていて、難しい哲学や社会学の内容を「ニーチェの言葉」なみの跳躍力で簡単化している。そして、こうした技術を持っている人はとても人気が高い。良くも悪くも、今の時代はこうしたスキルを持っている人が支持を集めるのだろう。

本の中で、プレゼンするときに提示する情報は3つにまとめろ、4つ以上になったらそれらは捨てろと書かれている。これはスティーブ・ジョブズのプレゼンテーション本(カーマイン・ガロ『 スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン 』)でも書かれていたことである。「3」という数字にどのような科学的な根拠があるのかは知らないが、少なくともこの程度の情報量が人間の感性に強く訴えかける量なんだということは間違いないようだ。

話は少しズレるが、僕は生涯教育として勉強している 戦争と芸術 との関連で、プロパガンダの技術にも少し関心を持っている。このプロパガンダの技術を考えたときに、彼の書いたプレゼンス能力がどの程度有効に生かされているのか、また生かされてきたのかというところも気になった。

Posted by Syun Osawa at 01:31