bemod

2011年05月20日

ザ・ファイター

監督:デヴィッド・O・ラッセル/2010年/アメリカ/新宿ピカデリー

ザ・ファイターボクシング映画がアカデミー賞をとったという噂を聞いたので、レンタルではなく、劇場に観に行くことにした。アカデミー賞受賞作品なので、それなりに人が入ってるかと思ったら、ほとんど客がいなかった(平日の最終回ということもあるが…)。その時点で少し嫌な予感がw

ストーリーは、プロボクサーのミッキー・ウォードとディッキー・エクルンドの実話に基づいている。過去にレナードと世界戦戦ったことのある兄ディッキー・エクランドは、敗れはしたもののレナードからダウンを奪った男として街の英雄になっていた。しかし、その後、ドラックにおぼれ、犯罪を繰り返す。一方、弟のディッキー・エクルンドは、兄の影に隠れながらも着実に勝利を積み重ねていき世界チャンピオンになる。

最近は、マイケル・サンデル『 これからの「正義」の話をしよう 』とかジェラード・デランティ『 コミュニティ ― グローバル化と社会理論の変容 』を読んだこともあって、この作品世界の中のコミュニティのことを気にしながら見ていた。

まず彼ら兄弟は絆が強い。さらに、家族の絆も強い。弟のミッキー・ウォードから見れば、兄も母親もろくでなしなのだが、それでもちゃんと家族と向き合い、一族のコミュニティを大事にしている。もしも、今の日本の都心部のように家族の絆が弱ければ、そもそもこういった作品は成立しないわけで、そうした意味でも強いコミュニティ意識が物語を駆動させていると言えるだろう。さらに街も田舎街らしく、顔見知りが多く、兄のディッキー・エクルンドは街の英雄として多くの人が意識しており、グローバル化とは対照的な牧歌的な街の様子が古きよきコミュニティへの郷愁を誘っていたように思う。

この映画から感じられる良さはほとんどその点に尽きていた。

ミッキー・ウォードを演じたマーク・ウォールバーグは、この映画のためにトレーナーを雇って肉体改造をしたらしく、かなりいい体をしていた。だから、ボクシングシーンもそれなりに様になってはいた。ただ、スピード、カウンター、一発のパンチの緊張感などボクシングのリアルさを追求する要素は少し足りず、コミカルな演出でごまかされていたように思う。そこがリアル志向だとより楽しめたのだが…。

Posted by Syun Osawa at 01:49