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2012年06月21日

下町ロケット

池井戸潤/2006年/文芸春秋/四六

下町ロケットシャイロックの子供たち 』、『 空飛ぶタイヤ 』に続いて、3冊目の池井戸小説。直木賞受賞作だそうな。

ストーリーは前に読んだ2作よりシンプルだった。宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平が、中小メーカーの社長としてロケット開発の夢にもう一度青春を捧げるといった内容。青春モノにとって重要な後半のドライブ感(ラストに近づくにつれて話がグッと盛り上がっていく感じ)が強く、一気に読み切ってしまった。

池井戸さんの小説は僕の仕事感を刺激するようなエピソードが満載なので、今回もいろいろ考えさせられた。僕の場合、仕事は生活費を得るためと割り切ってしまっていることもあって、仕事に夢を乗せるというようなことがなかなか出来ないでいる。より短時間でより効率よくお金を稼ぎ、あとの自由な時間で自分の好きなことをしたいと考えているためだ。

この小説では会社の持っているやや古臭い運命共同体(コミュニティ)として機能を再評価し、そこに人生のドラマを乗せている。たしかに自分の生きがいが仕事と重ね合わされ、それが成功へのプロセスとリンクすれば最高だと思う。僕もこういう風に仕事がしてみたいと思ったし、読んでいる間ずっと胸に熱いものがこみ上げていた。

ただ、これが可能なのは会社の事業が進んでいる方向と、会社のコミュニティとしての機能がリンクしているからだとも思える。そして、ここがリンクしていないのが今の会社の姿だとも思えるので、コスト切り詰めだけが至上命題となっているような会社の人が見る夢というのもまた見てみたい気もした。

Posted by Syun Osawa at 23:11