bemod

2012年07月18日

一般意思2.0 ルソー、フロイト、グーグル

東浩紀/2011年/講談社/四六

一般意思2.0 ルソー、フロイト、グーグルうーん…ちょっと物足りない!

東さんの本を読んだのは『 クォンタム・ファミリーズ 』以来。昔は2chの該当スレを見たり、ニコ生を見たり、イベントに行ったりとかなりのあずまんウォッチャーだったのだが、ここ最近は本当に関心がなくなってしまっていた(ニコ生は今でも見ているが…)。

ただ、講談社のPR誌『本』で連載されていた彼のコラムはずっと読んでいて、それが1冊にまとまったのが『一般意思2.0』である。内容的に連載時と大きく変った部分はないと思う。

この本の前半で示されている現代社会に対する現状認識についてはほとんど異論を挟む余地がない。というより、彼の要約した世界の解釈を今まで僕は前提に考えてきたようにも思うので、このあたりまでは「たしかにそうだな…」と思いながら読んでいた。問題はその先だ。

一般意思を東浩紀流に解釈して(その妥当性は僕にはわからないが…)、新しい無意識を引き出そうという試み自体は素晴らしいと思う。今の政党政治を軸にした議会制民主主義の制度に軋みが生じており、熟議による合意形成がどうやっても上手くいかないような場面が少なくない。そうした閉塞感をインターネットを軸にしたテクノロジーの力で乗り越えようというアイディアは、一つの意見として面白いと思う。

しかしながら、そのアイディアに具体性が乏しく、誰でもそのくらいの事までは思うんじゃないのか? という領域に留まっていたことがちょっと残念だった。それは彼の『 ゲーム的リアリズムの誕生 』でも感じたことだ。学者だから精緻な議論が大事なのだろうし、そういう方面からの批判は数多くあるのだろうが、個人的には『 クォンタム・ファミリーズ 』で展開したような妄想力で、もっともっと突き抜けた思想を展開して欲しい。僕は空気を読まないあずまんが大好きなのだ。

Posted by Syun Osawa at 22:21