bemod

2006年08月12日

空の思想史

立川武蔵/2003年/講談社/文庫

空の思想史中沢新一さんの『 宗教入門 』でスルッと仏教へ導かれ、調子に乗って読んでみた仏教関連本。ハードル上げ過ぎたかな? ムズ過ぎ…。

仏教の本質とも言える「空」の思想。この思想がインド仏教から中国を経て、日本に伝わる間に変遷していく様子が書かれている。大乗仏教の創始者・竜樹(ナーガールジュナ)が主張する「空」は全否定としての完全な空。それが日本に伝わる頃には「空」が「真理」といった意味が滲んでくるあたりの流れが面白かった。

仏教を理解していない僕が読むにはやや難しい感じだったが、自己否定を繰り返してたどり着く無常の世界みたいなものに、エレクトロニカの中にある引き算としてのミニマリズムを感じずにはいられない。

特に中田英寿さんもよく使っていた「自分探し」について、13歳のハローワーク的というか村上龍的な「Aだってある、Bだってある、Cだってある。だから君は君なんだ」という近年の日本の論法に違和感を感じていた僕には、「Aもない、Bもない、Cもない…」と自己否定を繰り返しても完全に自分を否定することなどできず、結局のところ「自分」は残ってしまう、という意味での探求の方がしっくりきてしまったのだ。高名な坊さんが修行に修行を繰り返しても自分を全否定できない(空に至れない)のに、それが一般人にできるわけがないという程度の意味だけど。

チョロッと読んでいた、安達元一さんの『 視聴率200%の男 』とか、おちまさとさんの『 企画の教科書 』に執拗に書かれていた「否定しない」というアッパーな考え方にも感銘を受け、仏教思想にある「否定する」考え方にも考え方にも感銘を受け、頭の中をグルングルン揺さぶられている今日この頃です。

Posted by Syun Osawa at 01:16