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2009年08月16日

しぶとい分散投資術

田村正之/2009年/日本経済新聞出版社/四六

しぶとい分散投資術現状のおさらい。サブプライムショック以降、世界的な株価下落の局面では分散投資の効果が得られないことが明らかとなった。そして近年、日本株式、日本債券、海外株式、海外債券の相関係数が高まる傾向もあって、長期投資を行う際に「分散投資と資産配分だけ気にかけていれば、あとは放置でOK」という楽観的な神話をそのまま受け入れることも難しくなっている。

では、どうすればいいか?

一番簡単な方法は、素人が投資に手を出さすことをやめることだw ただ、そういう身も蓋もない答えでは僕自身の欲望は満たせないので、投資をすることを前提に上手い方法を考えなければいけない。とは言うものの、そうした方法論を独自に展開している書籍は意外に少なく、僕の読んだ本の中では、唯一、中原圭介氏が『 サブプライム後の新資産運用 』で具体的な例を示していたくらいしかなかった。

この本は、タイトルに「しぶとい〜」とあるように、サブプライムショック後も分散投資は有効だよということを説明している本である。分散先の相関係数が高まっているからといって、その数値が完全に1になっているわけではないので、確かにその通りだろう。実際に僕もそうしているし、そうする以外の方法を知らないのだ。

ただ、繰り返しになるが、これまでの多くのインデックス投資本に書かれていた楽観的な見通し、「何だかんだ言っても世界全体で考えれば経済成長を続けているわけだから、市場全体にお金を投じておけば、上がり下がりはあるにせよ最終的に資産は増えますよ」という定説について、本を読めば読むほど、そしてまた、オンライン証券での自分の資産の価格変動を見れば見るほど、信じることに抵抗を感じるようになってきている。

やはり、その神話を信じるには、市場の変化が激しすぎ、そして何より投資のスパンが長すぎるのが問題なのだと思う。しかも僕がやっているのは単純なインデックス型の投資信託である。臼田琢美『 これがホントの「投資信託」入門! 』には、投資信託は長期投資には向かない金融商品ではないかとの指摘もあり、いよいよその信憑性が揺らいできているのだ。

その一方で、ある有名投資会社の社長が セミナー で、「セゾン投信のようなバランスファンドにまかせて、後は放置している」と話されているのを聞くと、未来の上下動はわからないのだから、ともかく市場にお金を入れて(上昇のタイミングは一瞬なので、市場にお金は入れておく必要はある)、後は運営のプロに任せておけばよいのではないかという気持ちも持ち上がってくる。このあたりは実に悩ましい。

投資を始めたばかりの僕は、今の状況を静かに見つめながら地道に勉強するほかない。投資タイミングが良かったせいもあって、損をしているわけではないので、この本の後半に書かれていたサイトや政府発表資料などをチビチビ眺めながら、今後の自分の投資との関わり方を決めていければと思う。もちろん投資自体を辞める可能性もある。

今ぼんやりわかっているのは、投資で儲けているというの人は、決して金融工学的に市場の動向を読んで儲けているわけではなく、行動経済学的に投資家心理を上手く読んで儲けているということだ。そうした考えを踏まえると、「このような本を読んだとき、投資家はどのような行動に出るのか?」という心理を先読みして動くという、非常にメタ的というかポスト投資的な動きが要請されている点において、昨今の批評の問題と通じるものがあると感じるのは気のせいだろうか…。

Posted by Syun Osawa at 00:18