bemod

2009年08月25日

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生

監督:庵野秀明/1997年/日本/アニメ

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生新劇場版の を観て、昔のエヴァも観たくなった。当時、それほどナイーブにこの作品に触れていたわけではないので、TVシリーズまで遡る気にはなれず。とりあえず劇場版だけ観ることに。

新エヴァと比べると、こちらの作品のほうが圧倒的に展開が早い。序では「笑えばいいと思うよ」の有名なシーンをラストに持ってきていたが、本作では開始30分ですぐにこのシーンが登場する。本来僕らが観客として楽しむべきはずのドラマ部分はあまり重要視されておらず、象徴的なシーンをつなぎ合わせ、それをテロップによる文字で固定している。そして、エヴァの世界観だけが印象付けられるような映像の上に、それぞれの登場人物が抱えている苦悩が心の声として被せられている。まるでトリップ映画のようである。

こんな作り方だったら、そら観るほうの内面も肥大化されて当然だろう。TVシリーズを観ていることを前提に作られた映画だろうから、細かな部分は端折ったのだろうが、これだけ観ても内容はほとんどわからない。シンジやアスカは絶えずブツブツ言ってるし、他の登場人物もトラウマ抱えまくっていたり、昼ドラ並みに人間関係がもつれていたりで、ネガティブな印象だけがプロパガンダされている。そういう意味で、旧エヴァの劇場第一作は、序と比べても結構ヤバめな作品だったのかもしれない。

それに比べたら新ヱヴァは心の声が明るくなっていて、しかも言葉ではなく行動でそれを示している。さらに、ドラマの部分で劇的な演出をするためか人間関係が整理されており、見通しがよくなった。例えば、4thチルドレンのトウジとシンジが対決するシーンで、トウジのポジションがアスカに変わっていたりして、演出による効果は前作より高くなっている。

新ヱヴァは見通しが良くなりすぎて、旧エヴァにあったオルタナティブ感や、わけのわからなさはなくなってしまったことは事実だ。それでもTVシリーズから始まって、旧劇場版、新劇場版と何度も同じストーリーを繰り返しているにも関わらず、素直に新エヴァが面白いと感じたということは、この作品にそれだけのポテンシャルがあったということである。よって、この作品は90年代後半というバブル崩壊後の見通しの見えない日本を象徴した作品である以上に、時代を超えて支持されうる普遍性を帯びた作品に近づきつつあるとも言うことができるのではないか。

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 まごころを君へ 』へつづく。

Posted by Syun Osawa at 00:16