bemod

2010年03月20日

第8回 インディーズアニメフェスタ

2010年3月7日/13:30−16:00/三鷹市芸術文化センター

第8回 インディーズアニメフェスタ4年ぶり のインディーズアニメフェスタ。

ゼロ年代後半にYoutubeとかニコニコ動画が出てきて、膨大な量の映像コンテンツに押し流されたのは商業アニメだけではなかった、自主制作アニメも例外ではなった、と僕は勝手に思っていた。そして、もはや自主制作アニメとか誰もつくっておらず、ニコニコ動画にMADとかを上げてるんだろうと思っていたのだが、大きな誤解だったようだ。

irodoriさんの「眼鏡」、三原三千夫「おかしなホテル」と凄いのがいきなり続いて、しばらくの間、自主制作家系のアニメを見ていなかったことを後悔した。今も良作の自主制作アニメってたくさん作られているのだね。クオリティ云々の話は、「日本におけるインディーズとは何か?」とか「海外の短編アニメと学生の卒業制作を比べるのはどうか?」とかいろいろあって、それでも日本の自主制作アニメのクオリティが上がり続けているという神話があるのだとすれば、それはソフトウェアの性能向上と表現技法のメソッド化が押し上げているのだろう(あとは、その人のマンパワーが大きいとか)。

とはいえ、今は大学の中にアニメーション学科が多く設置されているわけで、そうしたところからの底上げは無視できないはずなのだ。ところが、表現技法のメソッド化とは別の文脈で、つまり海外の短編アニメの根底に流れる社会風刺的なアプローチが、日本の作品にはあまり見られないという問題は依然残されている。

この問題は、先日の 東工大のシンポジウム で議論されていた「日本の未成熟問題」とつながるのかもしれない(この議論では、そうした日本の作品を肯定的に捉えている)。あとは、自主制作アニメ上映会の「現場感」とか。このあたりの思いは、下のスタジオぽぷりさんの作品の感想メモのところでちょっとだけ書いた。

面倒くさい話をつらつら書いたが、ようするに自主制作アニメ見るのって楽しいね、というだけの話である。(・∀・)イイ・アクセス もまだまだ現役でサイト運営されているので(これはほんと凄い!)、僕もしばらく見ていなかった自主制作アニメの山を少しずつ切り崩していこう。自主制作アニメ(つか短編アニメ)に特化したwiki系のサイトとかあると便利なんだけどねぇ…。

以下、感想メモ。

眼鏡

by irodori

セルシェードな3Dアニメ。画面のクオリティ高っ! 内容は、あずまんが系(この比喩がすでに古臭い気もするが)のショートショート。眼鏡を賭けたがらない女の子をフックにして、ストーリーが展開される、いわゆるテンドンもの。商業アニメを意識していた作りになっていて、インディーズだからこそ違った視点で…とういよりは、インディーズでも商業アニメと同じようなクオリティで作品が作れるぜ!っていう意思が見え隠れしている感じ。

おかしなホテル

by 三原三千夫

クオリティの高さに吹いた。バイオハザードみたいな斜め上からの視野でホテルの1本の廊下を映している。そこにカメラを固定して、方々のドアから人が出たり入ったり、そのうち動物や、戦車も出てきて…という形で盛り上がっていく作品。イシュトヴァーン・オロス の作品っぽいか。いや、他に思い浮かんだんだけど、名前が出てこない…。僕はこの作品に投票した。家に帰ってからネットで調べたら、プロのアニメーターの方だった。プロの人もっと参加しないかな…。

眠らせ先生!

by 野中晶史

大学の講義を受けているときに襲う睡魔。その睡魔との闘いを描いた作品。へたうまっぽい(といっても、かなり上手い)手描き2Dアニメ。おっさんでも、属性に関係なくシンプルに楽しめる、この手の作品は楽しい。

向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった

by 植草航

乖離する私。私。私。…といった感じ。詩的というか、中二病的な世界に触れて、ようやくインディーズアニメを実感した。といっても悪い意味ではなく、僕はこの手の作品がわりと好きなのだ。東工大のシンポジウム でも語られていたように、可愛さによって無関連化される、もしくは未成熟であるがゆえにクールな作品。

GO FLASH!!

by ミヤモトヨシノリ

富岡聡の遺伝子は着実に芽を出し育っているのか(知らんけど)。証明写真機を舞台にしたギャグストーリー。短編アニメは詩的な作品で雰囲気を作るか、ギャグでサックリ笑わせるかといった手法が、表現としては向いてるのかもね。

輝きの川

by 大桃洋祐

…とか思ってたら、ちゃんと物語つくってるアニメが登場。絵本のような世界で丁寧に切り絵でアニメーションを組み立てている。主人公のミルが追い求めたのは天の川? 絵本の世界とかまったく知らないまま「絵本のような」と書いたけど、絵本って何か教訓めいたものがあるのかな? ともかく、教訓なきファンタジー。とにかく美しい。

7お手本

by 中村武

この人の作品は、かなり前に観た記憶がある(たしか、大阪のプラネット映画祭だったと思う)。最後のクレジット見たら新作だったようだ。なるほど、シリーズ化してるのか…。シンプルな線を使用したモノクロのアニメーション。

The Light of Life

by 柴田大平

Showreelっぽい作品。ストーリーのない映像美で見せる作品を、そのままShowreelと書いてしまう僕の感性のなさ…w いつも思うけど、3Dでの光の表現とかどうやってるんだろうなぁ。AE使ったことないから、どこからどこまでが何の力によるものかとか、ちょっと気になる。

熱血宇宙人

by 山元隼一

島本和彦系の熱血アニメ。これもガッチリ手描きで作品つくっていて、しかも面白い。こういうの見るとDoGAのアニメコンテストとかまた行きたいなぁ…とか思う。

毒忍者ちゃん

by スタジオぽぷり

スタジオぽぷり作品を見ると、何か妙に安心するのは僕だけだろうか。ぶっちゃけ、僕の個人史の中では、好きな日本のインディーズアニメの系譜として受け入れている作品世界だったりする(FLASHだったら青木さんとか)。そこはかとなく漂うインディーズ感というか、インディーズだからこそできる笑いというか、そういう未達成感の逆利用みたいなところが、東工大のシンポ の話と直結する感じで好きなのだ。東工大のシンポジウムの二日目には(こちらは不参加、ニコニコ動画を見た)、「日本には「可愛い」以外の未成熟はないのか?」という話が出ていて、そこでは何も出ずに終わってしまったが、この系譜はある意味で別の形の未成熟と思う。未成熟であるがゆえに笑えるというところも含めて。

あとは現場感。そのとき、劇場に足を運んだ人だけが共有できる言葉を組み込んでいる。ゼロ年代には、商業アニメでもご当地アニメ的なものが盛り上がったが、視聴者に対してはあくまで均一に作品が提供されていた。しかし、今後は場所によって、または見る階層によって異なったイメージが提供されてくるという自体も起こってくるのかもしれない。昔、緒方直人がテレビモニターのCMで、「番組見るなら、(放送局名)」というのを、各放送局ごとにつくっていたが、あれをさらにハイブリッドした形のものが立ち上がってくる予感めいたものがあるが、どうだろうか…。話が完璧に逸れた。

内容は、くの一が毒団子を使ってどんどん殺すっていう話。

Face

by 中嶋涼子

お洒落な感じ。トランプっぽさが印象に残った。背景を完全に白にしたハイコントラストな映像を見ると、何故だかいつも昔『ひらけ! ポンキッキ』でやってたカンフーの映像でを思い出してしまう。

春の詩

by 梶原保奈美

犬と羊が出てきて、優しい感じの作品。

麦わら少女とへんな家

by 野山映

シェードが神。昔、『IKKI』の付録でついていた松本太洋のシェードとか(神風動画が作ったんだっけか)、こういうので普通にストーリーもの見る日は来るのだろうか。ぜひ見たい。

落ち葉掃きの人

by 宮島由布子

猫の話。コマ撮りらしいということが最初にわかって、しかも落ち葉を風に吹かせよる表現を多用していたので、その表現のことばっかり気になってしまった。コマ撮りって大変そうだけど、確実に一枚一枚映すことで具体的に前へ進んでいる達成感みたいなものがいいのだろうか。僕には到底できない芸当。

フミコの告白

by 石田祐康

おなじみ「フミコの告白」。圧倒的なスピード感が気持ちいい。コンテストでも1位になった模様。今後、彼はアニメーターになって 中村豊氏のような神動画 を連発しまくるのだろうか。楽しみである。

つか、だったら逆に、中村豊氏のような人がインディーズアニメを作ったらどうなるのか問題(つまり作画力で勝負じゃ問題)、みたいなものを思いつつも、海外短編アニメも好きな僕としては、海外ではそうであってもひたすらに言われるのは脚本、ストーリーの力が優先されているという問題も別に残る(つまり作画力ではないという問題)。個人的には、その両者のベクトルは相関係数が低いからこそ別々に楽しめるわけなので、投資の対象としては今のままでも悪くないじゃん、とも思っているわけだが、実際のところどうなのかは知らん。

Posted by Syun Osawa at 02:33