bemod

2010年10月13日

カール・セーガン 科学と悪霊を語る

カール・セーガン/訳:青木薫/1997年/新潮社/四六

カール・セーガン 科学と悪霊を語る富士ゼロックスのPR誌「GRAPHICATION 2010年7月号」のグラビアにドゴン族の写真があり、シリウス神話のことが書かれていた。単純に「これは凄い!」と思って他のサイトを調べてみると、超常現象の謎解き というサイトにそのドゴン族のネタに懐疑的な意見が述べられていた。その意見があまりに説得力があり、かつ科学的であったことから他の文章を読むようになり、気づけばすっかり超常現象の謎解きというサイトのファンになってしまった。

そんな謎解きさんが懐疑論者的立場の人にオススメする本として紹介していたのがこの本だった(前置き長っw)。そんなわけで、文字が2段組みでギッシリつまっていて、しかも分厚い本だということは手にとってから知ることになったのだが、訳者が青木薫さんだったので、信じて読んでみる事にした。青木氏の訳本にハズレなしというのが、僕の中での定説なのだw

内容的には、これまでに僕が行った 偽科学フォーラム とか、リチャード・ワイズマン『 その科学が成功を決める 』やアラン・ソーカル『 「知」の欺瞞 』などの本の先駆となるようなもので、かなり勉強になった。この本を読むと、科学の分野で最先端をいっているはずのアメリカの根深い問題が見えてくる。「信じやすさ/騙されやすさ」と「信心の強さ」の混同が、オカルトに対する懐疑的な主張を封じてしまう一因になっているようにも思える。

これは日本についても同様で、いわゆる小林よしのり氏の『戦争論』以降に出てきた保守系の若者(これを総じてネトウヨと呼んでいいのかは不明だが)の一部に見られる、「日本」という物語の再強化のベクトルが、あまりにも「自虐史観憎し!」の気持ちに引っ張られすぎていることにも現れているように思う。他にも「エコ」と「有機野菜=ナチュラル」を根拠無く結び付けているエコ信者にも同じ匂い感じる。

何でもかんでも疑ったり、深読みしたりするのがいいとは思わないし、いわゆる社会学的な裏読みならやらない方がいいとも思うのだが、「わからないこと」を「わからないこと」のままに留め、地道に積み上げられた科学的知見から可能な限りの判断を下し、それ以上の部分を妄想で一足飛びに穴埋めしたりしない。こういう事を言うと、文系の人には大抵ウザがられるのだが、そのくらいのリテラシーをベースに持っておくことはやはり必要なのだと思う。

Posted by Syun Osawa at 01:17