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2012年08月17日

社会の真実の見つけ方

堤未果/2011年/岩波書店/新書

社会の真実の見つけ方 なんとこの本、ジュニア新書から出ている。

にもかかわらず、彼女の著書『 ルポ貧困大国アメリカ 』や湯浅誠さんとの共著『 正社員が没落する 』と比べても、子ども向きといった内容ではない。おっさんの僕が読んでも十分にためになる本だった。

この本では、大阪の橋下市長が教育現場に競争現場に持ち込もうとしていることについて、アメリカの教育現場を例にとって批判している。橋下市長は好きな政治家の一人だが、この点に関しては堤さんの意見に同意したい。というのも、ひと昔前に流行ったフィンランド・メソッドに代表されるように、競争のあり方そのものを見直す方向にも学力低下改善の糸口があるように思うからだ。

競争原理が子どもの教育に上手く作用すればいいが、その競争原理が教育現場を荒廃させる可能性は否定できない。だからといってゆとり教育を推し進め、心の教育のような曖昧な教育を前面化することにも賛成できない。ではどうすればいいのか? 僕はこの問いに対して明快な意見を持っているわけではないが、岡本薫『 日本を滅ぼす教育論議 』あたりに書かれているように、何でもかんでも教育現場で解決しようとしないことが肝要なのではないかと思う。

本来、僕らが教育と呼んでいるものは学校現場だけで実現されるものではなく、家庭や近隣住民の中間共同体を含めた場所で実現されるものである。学校以外の部分で失っていった教育の機会をどのように取り戻すか、そして、学校にかかる教育の負担をどれだけ軽減するか。教育に対する視野を学力以外にも広げるのなら、そうした問いに立ち向かうほうがはるかに建設的だと思う。学びの環境を整え、教師の生徒指導の負担を減らし、学校では勉強することに専念してもらう。こうした方法でも学力は向上すると思うがどうだろうか。

Posted by Syun Osawa at 00:59