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2005年10月13日

日本の戦争画 ― その系譜と特質

田中日佐夫/ペリカン社

日本の戦争画戦争画について書かれた本のなかで、まっとうな「歴史本」と呼べるのって、もしかしてこれだけ? ほかにも『 イメージのなかの戦争 』(丹尾安典、河田明久/岩波書店)なんてのがあるけど、あっちは微妙なんで、ちゃんと描かれた絵にスポットを当てて、それに史実を照らし合わせながら語っているものはこれだけなのかも(知らないだけ?)。

戦争画についての本の多くは、戦前・戦中生まれの人が書いているケースが多いようで、そういう場合は必ずと言っていいほど揺れる心情が見え隠れしている。その一番強いのが司修さんの『 戦争と美術 』(新潮社)かも。否定も肯定もなく、とにかく「戦争画とは何か?」を追う旅みたい僕には映る。そういう気持ちに寄り添って見てしまうと、『アッツ島玉砕』に感動した僕のテンションもどんどん下がっていくんやね。

ただし、この本の中でも語られているとおり戦争画は戦争記録画と銘打たれていても最終的には「絵空事」でしかない。それは『 まぼろしの戦争漫画の世界 』(秋山正美/夏目書房)で書かれているとおり、戦時下の漫画の世界でも同じである。その絵空事が戦中は絵空事以上の効果を発揮してしまったことは間違いないし、その問題点は残る。だけど、そこの問題点をガッチリ受け止めながら戦争画の芸術性について語るから、迷走するんと違うのかな? 「絵空事」を「絵空事」として見る日和った僕の態度が良いかどうかは、今はよくわからない。

あと、戦争画を追う長い旅の結果見えてくるものは、「人間の罪深い業」だけという『望郷戦士』(北崎拓/工藤かずや/小学館)のラストみたいなことはわかりきってるんだけど、でもまぁ…もうちょっと。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:21