bemod

2005年11月23日

続アニメーション*スリー

坂本サク、加藤久仁生、坂井治
/2005年11月18日−11月30日/目白オープンギャラリー

続アニメーション*スリー何年か前にチャリンコで立ち寄った アニメーション*スリー が再び開催されていた。参加メンバーは坂本サクさん、坂井治さん、加藤久仁生さんと変わらず。展示方法も前回と変わらず半分が原画の展示、半分が上映スペースだった。

原画の展示では3人のアニメーションの下地の捉え方が三者三様で興味深かった。坂井さんはアクリル絵の具できっちり原画を描いている。絵本まで出してるわけなので納得。坂本さんはアクリルで描かれた3D用のテクスチャが展示されていた。新作の背景画は商業アニメの背景画のようだった。加藤さんは一番特徴的で、すべてが鉛筆で描かれている(これがまたいい雰囲気なんだな)。それをスキャナでパソコンに取り込み、パソコン上で着色しているのだろう。ただし、前回 紹介されていた「マスク抜き」の技法は、今回上映されていた『或る旅人の日記「赤い実」』では使用されていないと思う。

また展示ブースでは、3人のショートショート作品を集めたDVDが30部限定で予約販売されていた。これはレア。そして僕はレアものに弱い。以下、初見の主だった作品の雑感などをツラツラと…。

脚の生えた魚 告知用

by 坂本サク

イントゥ・アニメーション4 で公開された『脚の生えた魚(パイロット版)』に新たなシーンが追加されていた。中でも夕日がキラキラと反射する並みの表現が凄まじく、『フィッシャーマン』で描かなかった水の表現(あっちは水が枯れてんだけど)に対する作者の挑戦が見てとれる。3D表現も健在で、船、恐竜の化石、魚は3Dにアクリル絵画のテクスチャを貼って作っている模様。

坂本さんの作品は、アートアニメーションという意味不明な表現で括られている作品群と俗にいう商業アニメの間に位置しているように思える。人間と猿をつなぐ何とやらという感じ。そのどっちつかずな不安定感が少し気にかかっていたんだけど、そのもやもやはCM『JBCクラシック/JBCスプリント』というモノクロの作品を見て吹き飛んでしまった。完全に手描き一本だろうか。それとも実写と3Dモデルからトレースしてるんだろうか。いずれにせよナイスな腕前。

ひらひら

by 坂井治

今回見た作品の中で最も刺激を受けた作品。木漏れ日のアニメーションと言えばよいか。今年の DoGAアニメーションコンテスト で入選した宍戸幸次郎さんの『 かがみのげんおん 』という作品でも光に対する挑戦が見られたが、本作では実写の木漏れ日を単純にアニメ化するというのを超えて、さらにもう一歩進めた形で光を表現しようとしているように感じられた。具象から抽象へ。

木漏れ日の隙間からときおり登場する擬人化された木々や風であったり、緑と白で大胆に構成された背景(それは木であり風であり光でもある)の変化はかなり素敵。作品集出て欲しいなぁ…。

或る旅人の日記「赤い実」

by 加藤久仁生

JAWACON 2005 の3階展示ブースでも上映されていたらしい。2004年の作品ながら今回が初見。まず、これまで見た同シリーズとの画面の違いに違和感を感じる(タッチも違う?)。悪い意味ではない。今回の作品では画面がクリアになってることもあって、空気感が増した印象。

とにかくよく動く。こういったタッチの絵でここまで素敵な動きを見せる作品を僕はあまり知らない。立体表現にも積極的で多重スクロール(まさか3Dではないと思うが…)を多用しており、空気感に加えて立体感も増していた。失われたのは絵の持っていたやわらかさ。絵からアニメに重点が置かれた結果ということかも。

エンドロールを見ると、アニメーションは6人前後で作られたようだ。そして、アニメーション制作のチーフには森川耕平さん(『NATUNAL』を作った人)の名前があった。いろいろ納得。

雑感

3人の作品はどれもシンプル、そして誠実。まっすぐに自分の作品世界を構築している。こういう素敵な作品群が、どのように消費されていくのか。実はそちらについても興味があったりする。

10月に日仏会館で、フランスの学生が作った卒業制作作品を見た。その多くは3D(3Dの学校だから当然ですが)であり、どれも視線がPixerに向いていた。こちらの視線の先には需要があり、市場があるのだろう。

それに比べると、日本はわりと多くの制作者が2Dと3Dを横断した作り方をしているように思える。もはや2Dも3Dも実写もミニチュアも映像の細部に過ぎないという事でしょうかね。今回のイベントでも3人の手法はバラバラ。ただ共通しているのはどの作品もアナログ感が漂っていたこと。僕はそれが何より嬉しかった。

Posted by Syun Osawa at 23:39