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2008年09月12日

青春のロシア・アヴァンギャルド展

2008年6月21日−8月17日/Bunkamuraザ・ミュージアム

青春のロシア・アヴァンギャルドロシア・アヴァンギャルドについては、戦争と芸術 関連でヴィーリ・ミリマノフ『 ロシア・アヴァンギャルドと20世紀の美的革命 』や上野理恵『 ロシア・アヴァンギャルドから見た日本美術 』を読んだ程度なので詳しく知っているわけではない。

だから、西洋の抽象表現を中心とした芸術様式の変化に影響を受けたロシアの芸術家たちが、ロシア革命直前の雰囲気の中で、それらを先鋭的に発展させたものがロシア・アヴァンギャルドなのだと、僕はひとまず思うことにしている。

たしかに、このとき絵画表現は大きな変革を遂げたが、どこまで時代と対応していたのかは以前疑問のままである。というのも、レーニンからスターリンへと体制が移ると、革命の先取りと思われていた先鋭的な絵画表現は受け入れられなくなるからだ。スプレマティズムを牽引し、抽象表現として最初に一つの到達点へと達したマレーヴィチが革命以後に具象絵画へと戻っていくことも合わせて考えれば、ロシア・アヴァンギャルドの強度はそれほど強くなかった考えることもできるだろう。

もちろんボリス・グロイス『 全体芸術様式スターリン 』のように、社会主義リアリズムがロシア・アヴァンギャルドを更にラディカルにしたものだと考えることも不可能ではないが、ちょっと強引な印象を受ける。そういう経緯もあって、ロシア・アヴァンギャルドという熱狂をロシア革命とセットにして持ち上げる手法は、僕にはどうしても後付けのような気がしてならないのだが、このあたりは勉強不足のためなんとも言いようがない(デザインの領域ではソ連を象徴するものとして残っているわけだしね…)。

前置きが長くなったけど、こういうちょっと引いた目線があったので、今回は「斬新の確認」といったところに終始してしまった。すべてはシャガールのおかげ…とかはさすがに言い過ぎだけど、カンディンスキーだって早々にロシアからいなくなるわけで、どこまでを「ロシア」で括るんだい? …とかいろいろ考えてしまった。もう少し、リラックスして見るべきだったかもしれない。

ところでBunkamuraザ・ミュージアムの展示って、何でいつも照明があんなに暗いんだろう? 絵画と絵画の間に思わせぶりな引用を掲示しているところとかも含めて、個人的にはあまり肌の合わない美術館だったりする。

(関連)戦争と芸術

Posted by Syun Osawa at 00:20