bemod

2009年04月23日

スタバではグランデを買え!

吉本佳生/2007年/ダイヤモンド社/四六

スタバではグランデを買え!今の僕の読書状況はというと…。

北村慶『 大人の投資入門 』などの投資関連の本を読み、分散投資の必要性を知るようになった。次に、昨今の経済にまつわる状況について書かれた本(小幡績『 すべての経済はバブルに通じる 』や中原圭介『 サブプライム後の新資産運用 』など)を読んで、日本株式、海外株式、日本債券、海外債券と分散投資しても、それらの値が独立して動くことは難しくなっており、分散投資の効果が薄れていることを知った。実際、内藤忍氏なんかも『 内藤忍の資産設計塾 実践編 』では分散投資をすすめていたのに、マネックス証券のコラム内では相関係数が高まっていることを認めている。

それらを受けて、庶民は「じゃあこれからどうすんのよ?」となるわけだけど、そこで明瞭な指針が書かれた本は結構少ない。仕方がないので、ひとまずは手数料の安いETF、パッシブ型の投資信託、外貨MMFあたりを抑えつつ様子見することに…。そして、読書としては、もう少し現実的なレベルの本(最近僕が読んだ本の中では荻原博子『 給料はこうして増やしなさい! 』あたり)も読むことにした。

ようするに、それがこの本。

この本では、映画のDVDが時間が経過するごとに安くなる理由、携帯電話の料金が複雑な理由などお金にまつわるカラクリについて書かれている。他にもデジカメが大量に作られれば、工場の機械の稼働率が上がって設備投資分が回収されるために値段が下がる話や、100円ショップで取り扱われている商品の話など、金儲けの仕組みを知ることができて、商品を見る視野が少し広がったように思う。

特に人為的なコストの話として「比較優位」の話が面白かった。

よく仕事の出来る人と、あまり仕事の出来ない人が二人で同じ仕事を行う場合の仕事の配分の話である。できる人のことだけを考えていては、利益を最大化することはできない。あくまで仕事の総体が可能なかぎりの利益を追求できているかいるかどうかが問題なのであって、そうした判断の上で二人の仕事は配分しなければならないのだ。ところが、「カンチガイ君」と呼ばれるような自分の能力を過信しているタイプは、相手と自分との間の優位性だけを追い求めてしまって、結果的に総体として利益の最大化ができていないことが多いというのだ。

野球で考えるとわかりやすい。自分の成績だけを気にして、送りバントをしなかったり、走者を進塁させるための犠牲フライや右への流し打ちをしないなど、チームへの貢献が低ければ、個人がいくらそれなりの成績を残せていても、チーム全体としては勝利に対しての可能性は最大化されていないということになる。

つまり本当に優秀な人というのは、比較優位を十分に把握しており、出来る人は出来る人なりに、出来ない人は出来ない人なりに仕事を割り振りながら仕事の効率化を目指せしていける人なのである。これらの考え方は、今の職場にも大いに当てはまってしまうので面白かった。

なお、本のタイトルになっているスタバの話には若干の意義あり。

スタバはおかわりが100円でできるため、1度にショートの2倍の大きさのグランデを注文するよりも、ショートを1回おかわりしたほうが、「店員が二度コーヒーを入れる作業をすることによってコーヒーの温かさが持続される」というコストの分だけ得しているような気がするからだ。

あと、日本盤CDが3000円、還流CDが1000円で売られている場合、著作権者に入る印税が同じだとすると日本盤CDのほうが高くなるのか? という話で、著者は還流CDに30%の印税をのせれば、より安く出来るのではないかと書いている。確かにその通りだとも思うが、還流CDというのはあくまで日本盤CDが作られた後に作られるCDである。そして、日本盤CDというのは、著作権者が所属するレコード会社が製作しているCDなわけで、単なる流通元としてあるわけではない。その部分がスルーされていたので、話の意図が少しよくわからなかった。プレスを海外でするとかそういった話ではないような気もするので…。

Posted by Syun Osawa at 00:24