bemod

2009年10月01日

トップをねらえ2!(全6話)

監督:鶴巻和哉/2004年/日本/アニメ

トップをねらえ2!(全6話)ザックリ言ってしまえば『 フリクリ 』の延長線上にある作品。この作品の第一話が公開されたのは2004年で、エヴァ以降のGAINAX作品に見られた「ナイーブな心性を如何にして乗り越えるか」問題との格闘の様子が垣間見える作品だった。ゼロ年代の中盤に差し掛かった段階でも、この問題はなかなか手強かったのだ。だからこそ、あの超イケイケだった神作品『 トップをねらえ! 』を引きずり出して、この問題を乗り越えようとしたのだろう。

特に前作の設定を受けて物語を補完すれば、気の遠くなるような時の流れを超えて通じ合えることの喜びを感じさせられる内容になっている。それはたぶん新海誠『ほしのこえ』の切なさとも近いところで立ち上がる感情なのだとも思うし、逆に言えば、セカイ系的な私とお姉さまの関係だったり、自分探しだったりの痕がこの作品にはまだ根強く残っているとも言えるだろう。

『フリクリ』『トップをねらえ2!』『ヱヴァンゲリオン新劇場版』は別々の作品だから、ひと繋ぎにして考えることはできないが、感情の面だけに着目すれば、新しい作品になるにつれて確実に明るさというか、ポジティブさを取り戻しているようにも思う。

以下、感想メモ。

第01話 お姉さまと呼ばせて下さい!

あっ、そう。そういう展開なのね…。『 フリクリ 』のノリは確実に継承されているわけだ。「あっ! ノノたんのおっぱい!」みたいなのもいいけど、そこに至る経緯が荒唐無稽すぎて、これをすんなり受け入れるには僕は少し歳をとりすぎているのかも。老齢のオタクは死ぬのみ…かな? 前作と同じようなものを期待していたけど、それを求めるのはクリエイターの人には酷ってものなのだろうね。

第02話 お姉さまなんかになりたくない

ノノがフラタニティに入るまでの話。『 ヱヴァ:破 』を見たこともあって、画面から伝わってくる温度が少し近いようにも感じる。トップのほうがよりポップさを前面に出していて、あまり難しいことを言わないし、エロも少しだけ過激になっている。この作品の中で全面展開されているポップさが、過去のトップ1とどのように融合するのかはちょいと興味のあるところ。ただのスパイス以上の意味を持っているのか、いないのかは今のところ不明。

第03話 トップレスなんか大嫌い

チコ・サイエンスの話。ツインテールでちょっとナイーブな性格をしている。前半でざっくりとトップレスのメンバーと対立関係が説明され、同時にチコのトラウマも説明される。主人公であるはずのノノはあくまでチコの脇役にとどまっている。オチまで含めてちゃんとしたストーリ展開だったけど、何だか少し物足りない感じ。バスターマシーンの戦闘シーンだけちょっと頑張ってたか(絶対零度を下回る温度とか…)。でも宇宙ステーションで雪が降るイメージはつかめんなぁ。

第04話 復活!! 伝説のバスターマシン!

この作品のいいところは、敵が圧倒的だという事だろうな。その点については前作のほうが驚きだったが、今回もそこはちゃんと受け継いでいる。『 ガンバレード・マーチ 』では幻獣をまともに描かなかったけど、『トップ2』ではちゃんと描いている。戦闘の荒唐無稽さは悪くない。

今回の話、バスターマシーンに乗りたいノノが冥王星に行くというもの。トップレスの話がアイデンティティの問題に直結していて、そういうのは面倒臭いねぇ。『 フリクリ 』のダメな部分を受け継いでいる。あと、福井さんはアイドル的な意味では好きだけど、ノノ役としてはもう一歩って感じがする。

第05話 星を動かすもの

宇宙怪獣の正体が次第に明らかになる。そして、その強大さから人類にはその攻撃を防ぐ可能性が少ないことも明らかに。バスターマシンの中の人工知能が戦闘データを蓄積し、例えその時代の人間が滅びたとしても、次の世代がその戦闘データを読み込んで再び戦うらしい。しかし、世代が変わっても宇宙怪獣に勝つことが出来ず、その状況が何世代にもわたって続いている。もう少しドライな話だと思ったら、トップレスのエースが「私」について悩み始めたりしている。

宇宙怪獣はノノを探している状況が明らかになって、この作品も要するにセカイ系の変奏なんだなと…。宇宙が人類と宇宙怪獣の戦いの舞台になっている時点で天動説的な俺様世界観。旧作はもう少し丁寧に宇宙と物理をネタにしていたように思うんだけどなぁ(そういうおまけコーナーもあったし)。セカイ系の文脈の中に『トップをねらえ』を落とし込んだらどうなるかってところで商品化がなされたんだろうか? 今回はノノ全然出てこなかった。

第06話 あなたの人生の物語

地球を捨ててまで人類を救うとか、お姉さまと普通の女の子とかという話、地球をロケット噴射で動かしているとか、SFというよりも、完全に宗教映画化してる。こうなると僕にはちょっと辛いな。科学的な言葉を弄んでいるだけで、結局、科学には愛はなく、ラルクとノノとの心の問題というセカイ系の変奏に過ぎない。荒唐無稽にでか過ぎるというのは嫌いじゃないが、万有引力すら働いてないからな…。少なくとも「お帰りなさい」は旧作のほうがよかったな。

Posted by Syun Osawa at 02:04