bemod

2010年03月05日

きみにしか聞こえない CALLING YOU

乙一/2001年/集英社/文庫

きみにしか聞こえない CALLING YOU乙一って今、何してるんだろう?

数年前に、乙一の作品が次々と映画化される謎のバブルがあったが、小説はかなり長い間書いてないんじゃ…と思って、Wikipediaを見てビックリ! 本名の安達寛高名義で映画監督をしたり、脚本を書いたりしているそうな。しかも、先日見た『 ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜 』の脚本まで担当していた。この映画の感想で、快調に失敗したとか書いちゃったよw

あの映画に乙一らしさあったかなぁ? 僕が彼の作品で好きなところは、トリックやら感情の動かし方やらに引きの力があるのに、シンプルでアッサリした読み心地を残していて、その癖のなさゆえに、物語が僕の感情の内側にスッと入り込んでくる、その感覚が好きなのだ。そういう部分が『 ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜 』になかったわけでもないのだろうけど、うーむ。

乙一作品では『 夏と花火と私の死体 』、『 失われる物語 』、『 GOTH 』あたりが好きだったから、死体とか殺人事件とかが出てこなかったのがイマイチだと感じた原因なのかも。

で、今回読んだ『きみにしか聞こえない CALLING YOU』の話。残念なことに3話中2話が『 失われる物語 』に収録されていた話だった。しかも、未読だった「華歌」が一番微妙という…。そういや、乙一の短編は僕的に当たり外れの多い人でもあったな。

とはいえ、「Calling You」は数年ぶりに読み返したが、ネタばれした上でも面白い内容だった。主人公の一人が死んだ後にもストーリーが続くというモチーフは『 夏と花火と私の死体 』にもあるものの、本作のほうがより技巧的になっていて上手い。「傷−KIZ/KIDS−」は、口元に痣のあったシホの痣をアサトが引き受けた後、健気で優しかったシホが姿をくらましたシーンがとても印象に残った(こういうところに彼の作品の魅力があると思う)。

この2本は後に映画化されたらしい。短編として面白いとはいえ、映画化するほどの話だとは思わなかったので、映画の内容がちょっとだけ気になった。あと、個人的な願望としては、普通にまた小説を書いてほしいなぁ(『GOTH』の続編みたいなトリッキーなのではなく)。

Posted by Syun Osawa at 01:09