bemod

2010年06月09日

Saori@destiny 『WORLD WILD 2010』リリースパーティー

2010年5月30日/18:00−19:40/SHIBUYA DESEO

良かった! 2月に行った 中目黒solfaのイベント よりも場所が広くなっていて、ライブ空間的にも申し分なし(前回は狭いところに押し込められて悲惨な状態だったので…)。音もいい感じだった。

今回もキーボードの二人が参加しており、ライブに対する意識が向上している。アイドルイベントとはいえ、カラオケ音源&単独ではどうしてもライブが味気ないものになりやすいので、楽器隊をわかりやすい形で導入してくれたことはありがたい。ただ、残念なことに、今回でキーボードの一人の方が辞めるらしく、この三人のパッケージがわずか数ヶ月にして崩れてしまうそうな。残念。

そんなちょっと残念な三人が織り成す今回の2ndアルバム『WORLD WILD 2010』。これがまた凄くいいのだ。最初に行ったインストア では、その良さがちょっとよくわかってない感じだったし、次に行ったインストアでは、「ちょっとコンテクストを外しているんじゃないか?」的な違和感も示している。これは ももいろクローバーのパフォーマンス を見て、今はAKB48的なものを如何にして受け入れて乗り越えるかというところに力点があるのだと考えたためだ。実際、先日NHKで放送された『MJ』というアイドル大集合の番組では、ももいろクローバーが強いパフォーマンスを見せ高い評価を得ている。

Saori@destinyの場合は、Perfumeに乗っかったもんだから、その得体の知れなさからアルバムの音にその名残を残していて、それゆえにAKB48的な王道のアイドル路線とは違う世界を突き進んでいる。今回のアルバムでは、単純なエレクトロ路線に線を引き、「EZ DO DANCE」のカバーに代表されるハードコア路線を前面に押し出した。さらに、チープなサウンドを貪欲に取り入れつつも、それらを少しだけ脱臼したところに落としどころを見つけていて(たとえばラストのRemixなど)、それゆえにこのアルバムは不思議なオーラを放っている(彼女の詩の冷めた視線も大いに関係しているだろう)。個別のインストアではよくわからなかったが、アルバムを通して聴くとその感じが明快につかめた気がした。

今回のライブは、そうしたアルバムの良さが第一にあったとはいえ、AKB48のコンテクストからは遠く離れた(それこそ並行世界とでも言えるような距離…)アイドルの現場において、Saori本人が「息がつまりそうになった」と言うくらい強いパフォーマンスを見せたことも良かった点だと思う。この強いパフォーマンスはもたらす現場感という部分だけを見れば、AKB48やももクロにも通呈するコンテクストだろう。

ゼロ年代の中頃、どこかのヒップホップのミュージシャンが、クラブ文化における現場の不在を嘆いていたが、AKB48はドンキホーテの上という最もチープな場所にその現場を築いてみせた。ももクロが見せる生歌&生ダンスのパフォーマンスも、Saoriのシンセ導入による人力テクノ風の演出も、「虚構の現場」を築くという想像力に溢れている。

すべてが相対化された今、最先端の音楽などどこにもありはしないのだから、今この場所を基点にして膨らますしかない。だから近くにある音楽はどんどん取り込んでいけばいい。そう開き直ったあたりが、テン年代のアイドル文化におけるスタートラインなのかな…とか書いてたら、かなり頭悪そうなので、このへんで書くのをやめておこうw 我ながらキモ過ぎる文だった(毎度の事か)。

ともかく、『bounce』で出嶌孝次氏が書いていたように、「 I can't 」と「 グロテスク 」が神曲であることは間違いない。たぶん。

Posted by Syun Osawa at 00:05