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2019年12月13日

ジオストーム

監督:ディーン・デヴリン/出演:クレア・フォイ 他/アメリカ/2018年公開

典型的なアメリカのバカ映画。

姉の住むウェールズへ行く途中のオランダ航空の機内という極めて特殊な事情がなければこの映画は見なかっただろうと思う。SFの映像が進化しているため、いわゆるご当地(日本の銀座とか)がちゃんと描写された上で壊されていくという世界戦略を見据えた演出がなされており、マーケティング戦略のもとにきっちり作られた作品なのだなということはわかる。

それゆえに面白さに限界があるとも言えるんだが、それでおアメリカ映画がすごいと思うのは、この手の世界を守る系の話にしっかりアメリカの大統領を絡めてくる点で、それは『インデペンデンス・デイ』で戦闘機に乗って世界を救った大統領と何ら変わるところがなかった。

地球の異常気象を扱った上でそこにアメリカを絡めたらこういう映画になるというのは理解できなくもないが、一方でアメリカという国は暖化対策の国際ルール「パリ協定」から脱退しているわけで、敵を見つけてがっつり闘うことは好きだが地味な日々の生活の中で豊かな暮らしを取り戻していく系の取り組みは苦手というアメリカの姿を裏側で映し出した作品でもあるのかもしれない。

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2019年11月28日

カルテル・ランド

監督:マシュー・ハイネマン/アメリカ/2015年公開/ドキュメンタリー

皆殺しのバラッド 』に続いてメキシコ麻薬戦争のドキュメンタリーを見た。こちらはテンプル騎士団カルテルというメキシコマフィアの横暴に立ち向かうために地元民が結成した自警団の活動を追いかけた作品だった。

テンプル騎士団カルテルというマフィアは名前からも分かる通りキリスト教系の新興宗教のような側面もあり、他のマフィアと比べると穏やかというか比較的安定しているとネットニュースでは報じられていた。しかし、実態はやはりマフィアなので横暴の数々が地元民を苦しめていたようだ。

そもそもなぜ警察ではなく自警団なのかと言うと、メキシコマフィア関連に関しては警察も司法もほぼ機能していないのが昨今のメキシコの状況のようだ。それはどこかトルコの自警団にも通じるもので、結局自分たちで銃を取って家族を守るしかないという原始的な世界にまで追い込まれているということだ。

ドキュメンタリーの後半では自警団自体が地元民とトラブルを興すケースなどもさん出てきたり、時にはマフィア化しているケースも有るようで、なかなか出口なしの悲惨な状況である。秩序というのは一度崩壊すると、そしてそれを悪用することで生計を立てる犯罪組織が大きくなりすぎると、それをもとに戻すのにとてつもない労力が必要だということがよくわかるドキュメンタリーだった。

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皆殺しのバラッド ― -メキシコ麻薬戦争の光と闇

監督:シャウル・シュワルツ/アメリカ/2013年公開/ドキュメンタリー

長らくネットで追いかけているメキシコ麻薬戦争だが、近年になって作品がたくさん出るようになってきた。その先駆けとでもいえるのがこの作品だ。もっと早く見ておけば僕の感想も少し違ったものになったかもしれないが、散々メキシコマフィア戦争のニュースを見続けてきた僕の率直な感想は「ややぬるめ」という感じ。

重要なのはなぜ「ぬるめ」なのかということで、あまりに危険なネタ過ぎて、ドキュメンタリーとして記名でがっつりこのネタを扱うと逆に深堀りできないという事情がある。何しろメキシコではニュースキャスターもジャーナリストも少しでもカルテルに不利な立場に立てばバンバン殺されてしまうからだ。

だからネットの匿名ニュースあたりのほうがより激しい内容(ときには動画も含む)が書かれているために、そちらのセンセーショナルな内容に触れ続けるとややあっさりした印象を受けてしまう。しかし、メキシコ麻薬戦争についてまったく知らない人ならこの映画を導入にするのは良いかもしれない。

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ウルフ・ボーイズ ―二人のアメリカ人少年とメキシコで最も危険な麻薬カルテル

ダン・スレーター/訳:堀江里美/2018年/青土社/四六

メキシコの麻薬戦争に関しては10年以上前から追いかけている。メキシコの麻薬戦争に関するニュースはどれもぼやかされていてその内実をはっきりと追ったものは少ない。それは詳細にマフィアの事情を書くと、そのライターなり出版社がマフィアからの標的になるというトンデモな状況下にあるからだ。

ではなぜ今回この本が書けたかというと、ここに出てくる登場人物(マフィアのボスも含めて)の大半が逮捕され、それなりに時間が経過したからだろうと思われる。

アメリカ側のラレドという都市とメキシコ側のヌエボラレドという都市は川を一つ挟んで重なっており、アメリカ国籍を持つ者は自由に2つの都市を行き来できるようだ。それを利用して麻薬の密売が横行するわけだが、同じような地域の街でありながら二つの街の状況はまったく違う。その最も大きなところは、殺人を犯してもヌエボラレドでは麻薬がらみだとほとんど調査もされない。なぜなら調査するとその警察がマフィアに命を狙われることになるからだ。

アメリカ側は警察が機能しているため、アメリカ側で殺人を犯すと当然終身刑になったりもする。今回登場する二人のマフィアはアメリカの高校をドロップアウトした少年で、メキシコでマフィアのメンバーになり多くの人を殺した。そして、アメリカ側でも同様に殺しを働くようになり、アメリカ側の殺人によって彼らは刑務所に入ることになったのだ。

この本を読んでいるとわかったようなわからないような不思議な感覚に陥る。日本で暮らしているとそんな状況にはまずならないからだ。日本にもヤクザ組織があり、九州の方だとかなり荒っぽいという話も聞くが、数十人の人間を一度に殺すようなことはしないし、毎晩道路でマシンガンを使って対立メンバーをハチの巣にしたりすることもない。

しかし、そんな異常な空間が当たり前のようになっているのがアメリカのマフィアの世界だ。拷問も殺害方法もエスカレートし、僕もネットでたくさんの殺害写真を見たがどんなホラー映画よりも恐ろしい世界だ。ところが不思議なことに、そんな目を覆いたくなるような殺害写真もたくさん見ると次第に慣れてくる。

人を殺すという最も理性でストップがかけられているハードルも、異常空間ではそれが普通の出来事になってしまうのかもしれない。戦争がその良い例だろう。一般的な戦争と麻薬戦争の大きな違いは、普通の日常と並行してそれらが行われている点だろう。この共存が恐ろしい。

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2019年11月17日

ユニクロ潜入一年

横田増生/2017年/文藝春秋/四六

ユニクロがマクドナルドのような存在になって久しい。ファッションに疎い僕は気を抜くとすべての服がユニクロになってしまうほどこの会社の衣料品に影響を受けており、それゆえにこの本は興味深く読んだ。

消費者からするとユニクロの商品はとてもコスパがいい。生地が薄いだとか、1年着たらすぐダメになるなど文句を言いつつも、それでもユニクロに通ってしまうのは、それでも許せるだけの価格設定だからだ。圧倒的に安い価格を背景にグローバル企業に成長したユニクロだが、その価格設定にしわ寄せは働く人たちにいっていたということは、普通に想像してみれば当たり前のことでもある。

著者が働いていたビックロという新宿にある巨大なユニクロで働く人たちの時給は1000円らしい。僕が20年近く前に働いていた三越のパン屋もかなり忙しかったが、その当時ですら1100円ほど貰っていた気がする。ビックロへはよく行くが、この店は繁盛店でとにかく忙しい。店員さんが休む間もなく働いているのに時給が1000円というのため、この店には外国人の店員が多い。外国人客の対応をするために外国人の店員が多いわけではないのがこの世界の一つの困難さでもあるのだろう。

とはいえ、海外の(特にアジアの)工場の過酷さに比べたらまだマシなほうなのかもしれない。著者もユニクロをブラック企業の代表のように仕立てる意図はなく、あくまでフラットに自分の体験を書いている。それをそのまま読むと、客商売の店は多かれ少なかれどこもこんな感じ…という、成熟したはずの資本主義社会の持っているダメな側面(どうにもならないという意味で)だけがただ浮かんでくるというオチだった。

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ツッパリ生徒と泣き虫先生

六田登/NHKプロジェクトX制作班/2004年/宙出版/四六

この漫画はNHKのプロジェクトXという番組のスピンオフとして制作されたようだ。普通だったらそういう漫画は読まないのだが、『F』の六田登氏が描いているということと、いつか作りたいと思っているラグビー漫画関連の同人誌のために読んでみることにした。

漫画の題材となっている伏見工業高校ラグビー部と山口先生の話はあまりにも有名で、それこそ80年代の大ヒットドラマ『スクールウォーズ』の題材にもなっている。

内容的にはわりとどストレートな内容になっていて、六田氏の熱い絵柄とマッチして暑苦しい古き良きラグビー部の世界観が描かれていると言えばそうだが、さすがに現代ラグビー(というかスポーツ全般)の中で、不良が一念発起してスポーツに打ち込みビルドゥングスロマンを達成するというお決まりのストーリーが普遍的な価値をもっていくのかということに対しては、実は疑問だったりもするのだが…。

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コミック昭和史(全8巻)

水木しげる/1988年-1989年/講談社/文庫

コミック昭和史(全8巻)

水木しげる氏の体験談をベースに昭和史を描いた作品。水木氏は太平洋戦争に参加して左手を失っている。南国の島々でいつ死ぬともわからないような過酷な経験をしていたため、戦中の話が大半を占めている。

昔は戦中派とか戦後派とかいう言葉があって、そこに明確な分断線が引かれていた。この漫画を読むとその理由がはっきりとわかる。戦争という異常な空間(しかも現代の戦争とも違う)の中で人々が理不尽に戦い、理不尽に死んでいった経験は、その後の平和な日常の中であっても何度も何度も思い起こされたことだと思う。

事実、戦争関連のドキュメンタリーを見ると、90歳を過ぎて老人ホームに入っているような方々が、戦前の話となると昨日のことのように話し始め、感情があふれ出す。それくらい心に大きな影響を与えているのだ。

僕は戦争から遠く離れて生き、そして大人になった。そのいま、こういった漫画を読んだときに感じる圧倒的な理不尽さ・不条理さについて自分の中でまだ自分の意見が持てないでいる。

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ニコニコ超会議 2018

2018年04月28日/13:00-15:15/幕張メッセ
2018年04月29日/12:30-15:45/幕張メッセ

今年も2日間参加。何気に初開催の2012年からすべて参加している。初期の頃はアイドルヲタクもやっていたし、ニコニコ動画界隈(踊ってみたなど)に対する関心も強かったので、各ブースそれぞれを堪能していた。ここ数年はほぼどのブースも回ることなくただコスプレ撮影だけをしている。

今回気になったのは、来場者数がかなり少なく感じたことだ。ブースの数も以前に比べてとても少ない。公式発表では来場者数は過去最高となっていたので、その発表をまともに受けるとするなら、参加者が昔のように(それこそ僕のように)横断的にいろいろなブースやイベントに参加しているのではなく、今の僕のように好きなジャンルの好きなイベントに参加しているということなのだと思う。

だから、歌舞伎が好きなら歌舞伎だけ、コスプレが好きならコスプレだけ、踊ってみたが好きなら踊ってみただけに参加するので、タコつぼ化が進んで局所的な賑わい全体化されているだけのイベントに変化しているのだろう。はっきり言ってその状況は危機的だ。どれくらい危機的かと言うと百貨店の廃れ方と同じくらい。どちらもそういう複合的な喜びを享受する人が減ったことに起因しているのだろう。ちょっと残念だ。

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exPoP!!!!! volume121

2018年3月29日//1200円/渋谷o-nest

出演は、エルモア・スコッティーズ、your gold, my pink、The Songbards、折坂悠太(合奏)、キイチビール&ザ・ホーリーティッツ(出演順)。入口にいったら客層がいつもより少しだけ若く女性が多かった。これは売れかけてるバンドが混ざっているパターンなので、どのバンドなのかなと期待しながら見ていた。

your gold, my pink

去年、5年半ぶりに復活したらしい。正式メンバーは二人組(ギター&ボーカル)で、ベースとドラムはサポート。おいじさんの感性で見てしまうと普通のロックに思えてしまう。さらにおじさん目線で言ってしまうと、この感じのまま抜きんでるのは大変だろうなという余計なお世話も。

The Songbards

イケメンで声もなかなか良い感じ。曲がちゃんとポップなので、この日多かった若い女性客はこのバンドが目当てだったのかと思ったがちょっと違ったようだ。声が良いのに歌の歌詞が少し聞き取りにくかったのは残念。高齢の為、僕の耳が悪くなったのかもしれないが…。

折坂悠太(合奏)

声と顔が基本的に苦手なタイプであるが、曲も歌詞も工夫されていてセンスを感じさせられる。こういう人には同じくセンスのある人が回りに集まってきて、どんどんセンスのある感じになる傾向があるように思う。プロフィールを見ると実際にセンスのありそうなプロフィールだった。

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ

いいバンド! いつもなら1バンドが終わるごとに客が減っていくんだど今回は最後まで減らず。ようするに若い女性たちの目当てはこのバンドだったのだ。初見ですぐに良いバンドだなとわかるクオリティの高さだった。男女のツインボーカルの二人とも美男美女ではないし、とび抜けて上手い演奏というわけでもないはずなのだが、歌詞もすっと入ってくる(聞き取れる)し、何より雰囲気が良い。そして歌の感じも良い。コンセプトも良い(があるのかどうかもわからないけど)。

彼らの1stアルバムの煽りに「ハッピーサッドの先にあるハッピー」という言葉が、バンドを見て見てすぐに感じられるのも素晴らしいことだと思う。2月のWWWでのワンマンライブを完売させたらしいけど納得だった。

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星の動く音

坂口尚/1981年/奇想天外社/四六

星の動く音

続けて坂口尚本。

12色物語と違ってがっつりSFな作品群だった。しかも詩的なエッセンスと70年代から80年代の空気を含んでいる内容で、学生時代の自分がフワッと脳内に蘇った。僕は中高生のころにアフタヌーンあたりが好きで、ガロやトムの2.0的な意味合いでそれを読んでいた。だから坂口尚氏の作品というのは当時の僕の趣向に近く、僕よりも前の世代でちょっと背伸びをしたいサブカルチャー愛好家な人たちの琴線に触れていたのだろうと思う。

SF耐性のない僕のSFへの理解というのは最新科学とこれからの未来の予見みたいなところを含んでいるので、これから先の世界はどうなるんだろう?…という素朴な疑問に対する一つの提案をしてくれるものでもある。

しかしながら、そういう視点で古いSF作品を見てしまうと妙な古臭さを感じてしまい、どうしても当時の時代性だったり価値観だったりを引きずっていることを無視できなくなる。坂口氏の本はどれも好きだが、SF作品に関してはそこがやや引っかかったりもする。

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