2017年12月17日
大韓民国の物語
李榮薫/2009年/文藝春秋/四六
「韓国」の歴史について書いた本。朝鮮半島の歴史ではなく韓国の歴史なので、太平洋戦争時の日本による植民地の話や朝鮮戦争以降の話が中心になっている。
この手の本を韓国側の立場から読むと反日のスパイスが効きすぎて戦後生まれの僕にはしんどかったりするのだが、この本はそういうしんどさを感じることもなく読むことができた。
だからと言って親日としての立場を明確にするためだけのイデオロギー本ではなく、あくまでも誠実に史実を掘り起こしたいという意志によって書かれた本だと思った。そうでなかったら、今度は日本の嫌韓のスパイスが効きすぎてそちらのしんどさを感じることになるだろうから。
日韓の問題の中でよく取り扱われる「従軍慰安婦」に関して僕が思うのは、軍隊の性処理に対してある程度誠実に対応しようとしたがゆえに逆にそれがあだになってしまっているという気がしなくもない。レイプなどの直接的な暴力が横行していれば、そちらのほうが残酷であるにもかかわらず被害を確定させることが難しいために結果として雲散霧消してしまうという事態だ。
逆説的な言い方になるかもしれないが、ある程度国が関わる形で売春を管理したがゆえに、そこに国が女性を蹂躙するという物語を組み込まれて別の物語として敷衍してしまったという気がしなくもない。
PS.
2014年8月に朝日新聞が従軍慰安婦問題のきっかけを作った吉田清治氏の証言(16回の掲載記事)を取り消した。さすがに遅すぎたね。
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