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2018年1月9日

眠狂四郎殺法帖

監督:田中徳三/出演:市川雷蔵、中村玉緒 他/1963年公開

眠狂四郎殺法帖BSの番組で見た市川雷蔵特集をきっかけに眠狂四郎シリーズを見ることにした。これまで古い時代劇は見よう見ようと思いつつも食わず嫌いから見ることをためらっていた。古いということに加えてどこか高尚な印象を勝手に持っていたからだ。

今回初めて見て「もっと早く見ておけばよかったな…」と率直に思った。逆を返せばこんな楽しい大地がまだあったのかという喜びでもあるのだが、ともかく素直に娯楽映画として見ればよかったのだ。

ライバルとして登場する陳孫という中国人が少林寺拳法の達人なのはいいとして、なぜか武器を使わずに素手で戦う。一方の市川雷蔵は刀を構えているわけで、どう考えても不利だと思えるこの関係性がそのまま通ってしまうところも当時の細かなことは気にしない時代の空気なのかもしれない。時代劇は古い映画の方が時代考証が適当で、演出・ストーリーに関しても監督の思い入れが色濃く反映されていたりすることも一因だろう。

気になったところが2点あった。

1つはエロに関するネタ。眠狂四郎に千左が仕事を依頼する時、普通に体を要求している。今ならジェンダー的にはあれこれあるのかもしれないが、エロに関してはこの時代の作品の方がより真実に近いように思う。後発のTVシリーズである必殺仕事人では仕事の依頼を受ける代わりに体を要求するということはなかったように思う。

プレイボーイだからワンナイトラブをどんどん許容していくというのも、そういえば最近はこの手の主人公ってほとんど見ないなと思ってこれも新鮮だった。

もう1つは可愛さについて。ヒロインの中村玉緒は美人という顔立ちではない。おそらくこの時代の「可愛さ」を体現していたのではないかと思う。美人という基準はそこそこ普遍性を持っていると思うが、可愛さに関しては時代が色濃く出ていると思う。そのあたりの価値観も古い映画を見る楽しみの一つかもしれない。

他にも出てくる人みんなわかりやすい正義の人ではなく、欲望を抱えた悪人というところもよい。当時は時代劇全盛期だったので投下されている資金も多かっただろうし、スタッフもキャストも優秀な人材が集まっていたんだと思う。

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