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2018年1月11日

砂村新左衛門 江戸時代初期、新田開発に生涯を捧げた

溝手正儀/とびら出版/2008年/A5

砂村新左衛門 江戸時代初期、新田開発に生涯を捧げた会社が江東区に移転したこともあって、昼休みに会社周辺をうろうろする機会が増えた。その時に気になったのは「この場所がいつ埋め立てられたのか?」ということで、Wikipediaで調べてみたら江戸時代の初期と書かれていた。

埋め立てというと高度な技術を要するものだと思っていたので江戸時代の初期に埋め立てが終わっていたというのはとても意外だった。しかもその埋め立てを手掛けた砂村新左衛門という人物が水呑百姓出身ということで俄然興味が湧いてきた。

水呑百姓といっても砂村新左衛門の祖先は朝倉義景の家臣で武士の階級だったのだが、織田信長に攻め込まれ逃げた先で朝倉と一緒に自害したらしい。その子供が農民となり、福井の砂地での新田開発で成果をおさめ、砂村という性が与えられ、全国でその技術を生かした事業をすることになったようである。

江戸時代には電車などの公共機関はあるはずもないのに、彼は福井から大阪や神奈川、東京まで出張って事業をしていたことも凄いが、福井の砂畑開発から砂村という性を名乗るようになり、その彼が東京で埋め立てた場所が砂村新田となり、やがて砂町、南砂…となっていったところに歴史の面白さを感じる。

また、新左衛門は当時としては珍しいタイプのポジションにいた人で、事業家としてただ金儲けをするというよりは「人のためになる事業をやりたい」と本気で思っていたようである。そういう志の高い日本人が昔にもいたということを知れたことも良かった。

この本は自費出版の本なのだろうか? とても綿密に調べられていて、著者の気持ちの情熱のこもった素晴らしい本だったと思う。これをきっかけに江東区という街が江戸時代から栄えていたことを知ったので、もうちょっと違う角度から(性風俗など)知識を深めてみたいと思う。

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