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2018年1月24日

地獄の思想 ― 日本精神の一系譜

梅原猛/2007年/中央公論新社/文庫

地獄の思想 ― 日本精神の一系譜梅原猛の本は一度読んでで見たいと読んでいて、それが実現できずに40歳の誕生日を迎えてしまった。これはヤバいと思って最初に読んだのがこの本だった。かなり初期の作品らしく若書きというか文章に勢いがあり、若い論者から溢れ出る尖った主張が良い意味で前面に出ていた。「思想」をタイトルにつける本はこの本くらいの尖りが必要だろうと思う。

「地獄」をキーワードにして、仏教における地獄の扱われ方からはじまり、源氏物語・平家物語・世阿弥・近松門左衛門・宮沢賢治・太宰治の作品群から表出する地獄について論じている。一見すると何が言いたいのかわからないような本だが僕はかなり面白く読んだ。

僕は天国と地獄を対の概念として意識していたが、天国が生まれたのは浄土宗以降のようだ。それまでは地獄しかなかったというから驚きだ。また地獄というものは日本に限らずキリスト教などほかの宗教にも存在しており、これらは人間を人間たらしめる(倫理的たらしめる)ために機能している。

乱暴に言えば地獄はフィクションであり、フィクションによって人間が人間たらしめられているというのは興味深い。だから著者が過去の文学作品の中から地獄の思想を読み取るというのはとてもまっとうな方向性のように思った。

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