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2018年1月24日

さすらい

青木雄二/1997年/マガジンハウス/A5

さすらい処女作の「邂逅」、「ローカル線」をはじめ、「ラテン喫茶の頃」、「淀川河川敷」、「悲しき友情」など青年誌で掲載された短編が収録されている。最初の2本は新人賞に応募したものの落選した作品らしく、『ナニワ金融道』のヒットに引っ張られる形で日の目を見ることになったようだ。

前半の作品は漫画を描くことに対する経験値の低さゆえか演出が足りない気がしたが、後半の作品はその弱さが補われておりとても味わい深い作品に仕上がっている。特にヤングサンデーに掲載された「悲しき友情」はとても考えさせる深い内容だった。

「悲しき友情」のあらすじは次のようなものだ。

大学時代に学生運動をしていて定職に就かず、日雇労働をしながら漫画家を目指している青年と人生の終着点としてドヤ街に流れ着き日雇労働をしている親父の微かな友情。この微妙な関係性が見事に描かれている。45歳でプロの漫画家デビューをしたという超異色な漫画家にしか描けない凄い内容だ。

小説家なら遅咲きというか晩年にデビューする作家は少なくないが、漫画家はその特性ゆえかとても少ない。しかし漫画という世界の広がりを考えるなら、様々な人生経験を経たうえで、その体験をベースに物語を組み立てられる彼のような作家がもっともっと出てきても良いのではないかと思う。

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