bemod

2019年11月17日

ユニクロ潜入一年

横田増生/2017年/文藝春秋/四六

ユニクロがマクドナルドのような存在になって久しい。ファッションに疎い僕は気を抜くとすべての服がユニクロになってしまうほどこの会社の衣料品に影響を受けており、それゆえにこの本は興味深く読んだ。

消費者からするとユニクロの商品はとてもコスパがいい。生地が薄いだとか、1年着たらすぐダメになるなど文句を言いつつも、それでもユニクロに通ってしまうのは、それでも許せるだけの価格設定だからだ。圧倒的に安い価格を背景にグローバル企業に成長したユニクロだが、その価格設定にしわ寄せは働く人たちにいっていたということは、普通に想像してみれば当たり前のことでもある。

著者が働いていたビックロという新宿にある巨大なユニクロで働く人たちの時給は1000円らしい。僕が20年近く前に働いていた三越のパン屋もかなり忙しかったが、その当時ですら1100円ほど貰っていた気がする。ビックロへはよく行くが、この店は繁盛店でとにかく忙しい。店員さんが休む間もなく働いているのに時給が1000円というのため、この店には外国人の店員が多い。外国人客の対応をするために外国人の店員が多いわけではないのがこの世界の一つの困難さでもあるのだろう。

とはいえ、海外の(特にアジアの)工場の過酷さに比べたらまだマシなほうなのかもしれない。著者もユニクロをブラック企業の代表のように仕立てる意図はなく、あくまでフラットに自分の体験を書いている。それをそのまま読むと、客商売の店は多かれ少なかれどこもこんな感じ…という、成熟したはずの資本主義社会の持っているダメな側面(どうにもならないという意味で)だけがただ浮かんでくるというオチだった。

読む[書籍]  ユニクロ潜入一年 はコメントを受け付けていません