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2017年12月12日

襲撃 中田カウスの1000日戦争

西岡研介/2009年/朝日新聞出版/四六

襲撃 中田カウスの1000日戦争世間一般に流布しているこの事件のイメージとは違う印象を受けた。僕がこの本を読むまで持っていたイメージは、中田カウスがヤクザと懇意にしている山口組の組長の力を背景にして吉本を中心にその影響力を誇示しているというものだった。そしてそれは吉本創業者一族が週刊誌に流した手記によって広められたものだった。

この本で書かれている内容も一方の主張であるので必ずしもそれがすべて真実だとは言えないのだろうが、概括すると吉本創業者一族と中田カウスは元々懇意にしていたが仲違いし、吉本創業者一族が頼りにしていた中田カウスを逆に攻撃するようになったということらしい。

また中田カウス周辺のトラブルだけでなく、テレビでよく名前を耳にした木村氏や横澤氏などほかの有力者の権力闘争についても書かれていて、こちらも面白かった。吉本の凄さは凄い人たちがガチンコのバトルを繰り返していて、そのガチンコが吉本という会社のエンターテイメント性をさらに高めているところだろう。

これに関してはエイベックスなんかも似たような感じだという気がする。激しい競争が結果として会社を活性化させるというのはどこの世界にもあることで、逆にそのリスクを恐れて協調路線をとった瞬間に緊張感が切れ、会社が勢いを失ってしまうということもあるのかもしれない。

人がバトルするのはどちらかに善と悪があるからではなく、どんな関係にも利害関係が発生するからで、だからこそ経済活動を真摯に追い求めると利害関係の激化は起きてしまう。これは当然のことで、それが嫌なら計画経済をやるしかないのだがそれを日本の人々は望んでいないだろう。だったらそのバトルは必然と受け止めて生きるしかない。…と思って、僕も日々仕事をしているが、職場ではなかなか受け入れられない思想でもある(この匙加減が難しい)。

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