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2017年12月10日

憚りながら

後藤忠政/2010年/宝島社/四六

憚りながら元後藤組組長・後藤忠政氏の自伝を読了。

アウトロー系の本では話を盛るために個人名を伏せたり事件を遠回しにほのめかしたりしているものも少なくないが、そこはさすが後藤組組長。伏字にすることなく有名人の名前がバンバン登場した。そういうもったいぶった脚色をする必要がないくらいに壮絶な人生の記録だった。

僕は元々ヤクザやマフィアの本を読む機会が多い。そしてその生き方に共感したりする場合もある。平々凡々と生きているし、ヤクザどころか不良でさえなかった僕が彼らの話に耳を傾けたいと思うのは、彼らが行った犯罪を美化しているからではなく、その生き方そのものに社会に対する批評性が含まれている気がするからかもしれない。

「長いものには巻かれろ」ということわざがあるが、リスクを取りたがらない日本人の特性からそれを実践している人は多い。ヤクザも縦社会なのでその点においては大きく変わるところはないのかもしれないが、しかし時折やってくる「戦わなければならない」という一線を持っていてしばしば大きな衝突を起こす。そして死ぬことさえある。

おそらくその部分だけが好きなんだろうと思う。シルヴィオ・ピエルサンティ『 イタリア・マフィア 』の感想で「マフィアは簡単に人を殺す。そして、自分自身も簡単に死んでしまう。」と書いたが、生命という人間にとって最大のリスクに対して勇敢なことに心ひかれているのだと思う。

そのことについて後藤氏は「居直る」と表現しており、その重要性について書いていた。勝てない喧嘩をするということじゃなくて、勝てようが勝てまいが喧嘩しなければいけないことがある。動物だって子犬でも熊みたいな大きい動物と戦っているし、死ぬかもしれない中でも勇敢だ。それができなくなっている自分についても考えさせられる本だった。

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