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2017年12月28日

現代思想 2015年1月臨時増刊号 ピケティ『21世紀の資本』を読む

トマ・ピケティ、ポール・クルーグマン、諸富徹 他/2014年12月/青土社/A5

現代思想 2015年1月臨時増刊号 ピケティ『21世紀の資本』を読む2014年の後半はフランスの経済学者・ピケティの『21世紀の資本』が話題になっていた。この本は700頁を超える経済学の本でありながらアメリカで大ベストセラーになっており、その波が日本にも押し寄せてきたのだ。書いてあることが高度なので僕が要約して話すことはできないが、超単純に言えば歴史上ほぼすべての時期で「資本収益率(r)」>「経済成長率(g)」が成立しており、これを放置すれば貧富の格差はますます広がるということだ。

富裕者は税金対策で海外に資産を移すなどして節税に取り組み快調に資産を増やしている。国はそうした富裕層の海外流出を防ぐために減税などの措置をとることでさらに資産は増え続ける。これは普通の感覚からみても変な話なので、グローバル富裕税を課してどの国に資産を移動させてもちゃんと課税できるようにしようという理想も掲げられているようだ。

ネットでピケティ関連の記事を漁って上記のようなことが概括されていることを理解し、それだけだと物足りなくなったので同書を読むことにした。マルクス系の経済学者から細部への突込みがなされていたり、哲学者からよくわからない指摘が入っていたりと、個人的にはそのへんの話はどうでもよくて、諸富徹氏の論考などがとてもわかりやすくて良かった。

累進課税の強化や資産課税の強化というとすぐにマルクス主義=左翼みたいなレッテル貼りをされてしまうけれど、事態はそういう感情的な話ではなく資本主義社会というゲームボードには多くのバグが存在し、それを取り除くためにみんなで考えようということなので、例えばこの前の選挙もアベノミクスか否かではなく、インフレ(アベノミクス)か?資産課税か?という対立軸にすればわかりやすかった気もする。

もっともそうした話は共産党あたりが言っている話ではあるのだが、ピケティのようにマルクス抜きでやったほうが世間的な受けもいいし実行可能性はより高まるようにも思う。

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