2017年12月28日
ラップのことば
猪又孝/2010年/ブルース・インターアクションズ/四六
日本語ラッパーへのインタビュー集。参加アーティストはANARCHY、いとうせいこう(口ロロ)、宇多丸(RHYMESTER)、K DUB SHINE、COMA-CHI、サイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)、SEEDA、SEAMO、Zeebra、DABO、童子-T、般若、PES(RIP SLYME)、BOSE(スチャダラパー)、Mummy-D(RHYMESTER)(五十音順)。
ヒットチャートに顔を出すような大物ラッパーからインディーズで注目されているようなハードコアなラッパーまで幅広くピックアップされているのが素晴らしい。内容的にも作詞方法やテーマの見つけ方などラップに関わる具体的な話に言及していてとても面白かった。
日本語ラップは誕生した頃からすでに限界を抱えていたという。それはアメリカのラップのスタイルをそのまま日本語に置き換えても上手く言葉がリズムに乗っからないことで、そこをいかに克服していくかというところからスタートしているところが興味深い。
それぞれのラッパーは他の日本語ラップを聞きながら、「あいつがこうやるなら自分はこうしてみよう」という感じで試行錯誤を繰り返している。メジャーだろうがインディーズだろうが技術(スキル)に対する真摯な態度がある。だからどのラッパーも作品ごとにスタイルが変化するしその変化を恐れていない。
そして何より素晴らしいのが、最初はアメリカのラップに似せようとしてフロウ(リズムへの乗せ方)の方を重視していたラッパーたちが、より言葉をシンプルにわかりやすくしていく過程だ。自分の思いをラップを通じてちゃんと客に届けたいという思いから、言葉はどんどんわかりやすくなりシンプルになるのだ。最初からシンプルだったわけではなく、若い頃に自分のスタイルにとらわれて複雑だったものが研ぎ澄まされてシンプルになっていくという過程を多くのラッパーが踏んでいることに一番感銘を受けた。
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