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2017年12月28日

オスマン帝国六〇〇年史

設樂國廣 監修/2014年/KADOKAWA/中経出版/A5

オスマン帝国六〇〇年史イスラム国に関する知識を得たくてAmazonで手ごろな新書を探していたところ、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のところでオスマン帝国の本がちらほら目についた。トルコとイスラム国に何の関係が? と思ってスルーしようかとも思ったが、おそらくイスラム国に関する即時的な情報だけを得ても立体的な知識にはならないと思いオスマン帝国の本から読み始めることにした。

とはいえ、長いやつは無理そうなので写真資料がたくさんあるものとして選んだのがこの本だった。読んで大正解。オスマン帝国の歴史というのはいま中東で起きている問題と超関係があったのだ。

シーア派との関係、部族間の抗争、西洋と東洋の融合、宗教対立など、いまシリアで起こっているIS(通称・イスラム国)の問題の裏側にある人々の分断線というのは昨今始まったものではない。であるがゆえに、過激思想に簡単に引っ張られてしまうわけだ。

日本にも歴史修正主義者という人たちがいるが、歴史というのは常に後世の人間の手によって都合よく書き換えられてしまうという問題があり、それをしないことが例えば歴史学という学問の倫理観だったりもする。ただ、その歴史の扱いが政治的だったり宗教的だったりという意味合いを強めていくと、どうしても自分たちのコミュニティを補強するために使われていくことは避けられない。これは世界共通の問題だろう。

オスマン帝国の600年の歴史というのもそういう意味合いが濃く、事実としてあった出来事をどう解釈するかでオスマン帝国の捉え方もどんどん変化していくのだと思う。それはオスマン帝国という国があった時代からそうだったのだということもこの本を読んでいて何となく感じられたことだった。

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