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2018年1月5日

風俗で働いたら人生変わったwww

水嶋かおりん/2015年/コアマガジン/新書

風俗で働いたら人生変わったwwwAV女優のインタビュー本やら援交少女のルポなどエロ界隈の本をちょくちょく読んできたが、風俗で働く女性の本を読んだのは今回が初めてだと思う。しかもこの作者は1・2年風俗で働いたというのではなく、15年も風俗業界で働いている現役かつベテランの風俗嬢だ。

まず驚かされたのが文章の巧みさ。ゴーストライターが書いたというよりは、大学院生が風俗業界に入ってその体験談をもとに論文を書いたかのような文章だった。しかも、中身は15年のキャリアに裏打ちされた脚色の少ない内容(逆に大学院生のものは案外脚色が多かったりする)で納得させられることが多かった。

この本を読んでいろいろなことを考えた。

その中で一番のトピックスとして頭に浮かんでいたのは「風俗という職業をあなたはどう考えますか?」というものだ。僕自身はそれほど偏見を持っていない立場にあると思っていたが、それでも性を商品化することに対する何かしらの引っ掛かりが今でも自分の中に存在している。

これは風俗で働いている人にもみんなあるのかもしれない。しかし問題はそこではなくその先だ。著者が本の中で訴えているように店舗型風俗が警察の取り締まりによって無店舗型に切り替わったことで、風俗嬢自身のリスクが高まっている事実に対して目を向ける必要がある。見たくない現実を見えないところに押し込めるというやり方は確かにそこに存在している(そして必要な)人たちを無視することであり、それ自身が人権侵害にもつながる。

風俗の問題は現実に風俗で働いている人の問題よりも、その前の段階の問題で思考停止されていることが多く、僕たちは現実に起きている様々な問題やリスクについて棚上げしている。その棚上げに対して、「現実はこうですよ」と言い逃れができないくらい丁寧に解説されているのがこの本だ。

「風俗という職業をあなたはどう考えますか?」という問いについて是非論を考えることも大事だが、そこで思考停止して現実を見つめない態度は誠実とは言えない。そのことを思い知らされた本だった。

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