bemod

2018年1月9日

蟻の兵隊

監督:池谷薫/2006年/日本

■■■中国山西省日本軍残留問題に取り組む元残留兵・奥村和一氏の活動の記録を追ったドキュメンタリー。僕はこの映画を見るまで中国山西省日本軍残留問題などというものがあったことすら知らなかった。この問題について、Wikipediaには次のように書かれている。

日中戦争終結後、中華民国山西省にあった日本軍と在留邦人が戦争終結の帰国命令に従うことなく現地にとどまり、そのうち約2600人は中国国民党軍の閻錫山(えんしゃくざん)が指揮する軍隊へ編入され、終戦後も4年間にわたり戦闘員として中国共産党軍と戦った問題である。

閻錫山と密約して残留兵を売ったのが澄田らい四郎中将と言われており、彼はA級戦犯でもあったため終戦後に偽名を使って帰国したのではないかともこの映画の中では推測されている。その彼の息子はバブル崩壊を引き起こした元日銀総裁の澄田智氏である。

この文章を書いている2015年11月19日の数日前にフランスで同時多発テロが起きた。そのために戦争について何やらを思いこのドキュメンタリーをふいに見たわけであるが、戦争の困難さというのはやはり集団で起きているため様々な問題が同時多発的に起きてしまうことだろうと思う。

戦争には国対国の形式的な意図を持った対立構図があるわけだが、ミクロで言えば人対人の根拠ない争いが無数に引き起こされることでもある。例えば街中でもめ事が起こったり、火事が起きたりしただけでもそれ解決するには相当な日数と労力を要する。それが戦争となると至るところで起こるわけだから、それぞれの細かなことを完全に解決していくことなどほど不可能なのだ。

その時に出てくる問題(例えば侵略した村にいた娘を軍人がレイプするなどの問題)というのは、その軍人が悪人だから起きるというよりは、戦争という異常な空間に置いてまったく無秩序になった際に湧きあがる欲望みたいなものによって引き起こされているように思えてしまう。

変な理屈だが戦場で生命の危険にかかわるリスクをおっているのだからレイプ・略奪くらい良いだろうという変なロジックがまかり通るくらいの興奮状態もしくは異常空間であり、そこでは人間の欲望がむき出しになるため、それを理性でおさえこめない人はどんな人だってそうなりうるという危険性を示しているようにも思う。

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