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2018年1月10日

AVビジネスの衝撃

中村淳彦/2015年/小学館/新書

AVビジネスの衝撃AV業界が儲かっていないという噂は聞いていたが、この本を読んでその事態が想像以上に深刻だということを痛感させられた。「レンタルビデオ VS セルビデオ」による競争の激化・不況・デジタル化・インターネットの登場などにより業界の再編が進み、需要と供給のバランスが完全に崩れてAVビジネスでは食えなくなっているそうだ。

たしかにこれは衝撃だ。

今の時代は供給過多なので安くコンテンツを手に入れることができるし、モデルの質も昔と比べてはるかに高い。だから一人のAVファンとしては良いことのようにも感じるが、ビジネスとして成立しないのであれば今後は新作が出なくなり、古いものの焼き直しをAV制作会社ではなく版権の管理会社が粛々と行うだけの小さな世界になっていきかねないからだ。

AV業界は生き残りの方策としてアイドルビジネスと同様のイベントでの手売りを増やしたり、海外への進出をはかっている。海外への進出は中国ではかなり成功しているらしくこの流れは加速しそうだ。中国はAVを自国で作ることが現状では難しいため、日本のAVが隙間産業的に受け入れられているからだ。

興味深いのはこうした流れによって、国内では女性の性の商品価値は下がっているのに対して、中国などでは逆に上がっているという自体である。昔から日本人の女性は海外でモテていたが、ますますその流れは加速しそうである。「日本女性は性にオープンである」というイメージはたんにビッチであるということを意味しておらず、男性に対して献身的であるというようなポジティブな受け入れられ方をしているからだ。

ところで、今回ようやく全貌を知ることができたのがAVに女優を送るプロダクションの存在だ。街中でスカウトマンが声をかけモデルとしてプロダクションに所属させ、そこを通してAV出演をさせる。そうしたビジネス自体は昔から行われていたが、そのプロダクションというあいまいな場所に以前 話題になった関東連合などが入り込んでおり、半グレと芸能人達を結び付けていた。そうしたアウトローな側面もぼんやり書かれていた。

結局この業界は女優のクオリティで成立しているため、「可愛い子を提供できる人」も同時に必要とされている。そしてそれは学歴や大手企業のネームバリューではどうにもならない特殊な能力である。この能力は女衒の時代から変わらず有効であり続け、このブログを書いている2018年でもまったく変わりなく有効である。そこにアウトローな人たちが活躍できる場所があったのだ。

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