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2018年1月15日

ルポ 中年童貞

中村淳彦/幻冬舎/2015年/新書

ルポ 中年童貞彼の本を読むのは『 AVビジネスの衝撃 』以来2冊目。立花隆のような膨大な情報を基にした巨視的なルポではなく、リアルと地続きになっている微視的なルポだった。そのために中年童貞という社会が抱えている大問題を俯瞰で捉えているとは言い難い。

しかしながら介護現場における中年童貞をこじらせた独身男性たちの困難さの一面をよくあらわしているとは思う。僕は以前ホームレスの実態を追ったルポにハマっていろいろ読んでいたことがあるが、それに似た読後感を持った。というのも、ホームレスはその実態を知らないと「心の弱い気の毒な人たちが社会のセーフティーネットから零れ落ちた」と思われがちだが、どちらかというとホームレスになったのは自業自得のように思える人も少なくなかったからだ。

今回のケースも自業自得のように思える人たちが底辺で中年童貞をこじらせていて、そういう人たちをいかにして救うかという問題はかなりの難問のように思えた。私自身中年の独身なので他人ごとではなく、冷静に自分を俯瞰で見れば思い当たるところがちらほらある。

これは童貞卒業の問題というよりは、日本の一般的なコミュニケーションのルールというかコミュニティから零れ落ちた人たちの居場所をどうやって作るかという問題であり、その居場所問題は実は全然解決していない。コミュニティの問題は前から関心があったが、最近は中年の孤独をこじらせているという意味で他人事ではなくなったためより身近なものとして受け止めている。

…と、同時にそのコミュニティにはこのルポで登場した坂口みたいな人たちも関わってくるので、そういう人たちとどのように関りを持っていくかということも重要な課題になる。そんなことを切実に考えさせられた本だった。

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