bemod

2018年1月26日

トキワ荘青春物語

手塚治虫&13人/1995年/蝸牛社/文庫

トキワ荘青春物語トキワ荘の話は藤子不二雄『まんが道』にとどまらず本や映画なども含めてたくさん読んできているので大きな驚きがあったわけではない。トキワ荘関連の本を読んでいつも思うのは、大きな時代のムーブメントが湧き上がるときには幸運な出会いが重要だということだ。周りの影響によって自分の才能も開花していくということが少なくないからだ。

この本は1987年に出た本の文庫版であるが、書かれている漫画自体は1970年代初期のものが多く、トキワ荘時代の回顧録のような体裁をとっている。そしてその回顧録自体が古くなり懐メロ的な趣を持っている。それだけに最近書かれたトキワ荘モノとは違った粗っぽさがよかった。

特にのちに大物になった漫画家よりも漫画家としては大成しなかったメンバーの章が面白かった。トキワ荘に対する思いが人によって全然違うのだ。寺田ヒロオを真面目でつまらない人間だと考えている者もいれば、トキワ荘自体をスーパースターの集まりで敷居の高い場所だと見ている者もいた。

トキワ荘伝説は良いも悪いも含めてかなりエピソードが伝説化されているが、この本で書かれていた素朴な感想が一番真実に近いのだと思う。

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