2018年1月29日
ロストワールド
手塚治虫/1994年/角川書店/文庫
手塚治虫の作品は全集ですべて読みたいと思っているのだがほとんど実現できていない。それでも少しずつ…ということで読めるものから読んでいる。今回の本もそんな一つ。
この文庫には本のタイトルにもなっている「ロストワールド」と「一千年后の世界」という2本の中編が収録されていた。どちらも1948年に発表された作品だ。終戦から3年後にこれほどまでしっかりしたSF作品(しかも娯楽作品)が作られたことに驚かされたと同時に、こうした作品群が終戦後の少年たちの希望になったことは容易い想像できる。
漫画の技法としても劇画以前ということもあってかなり実験的な試みがなされており、2016年のいま読んでもなかなか斬新だった。
ストーリーの作り方に関して『 マンガの心 』だかに書かれていたことがちゃんと実践されていることにも感心した。それは演繹的なストーリー作りのほうがキャラクターが生きて読者をひきつけ、しかし物語にしっかりとした展開にするには帰納法的なストーリー作りのほうがよく、そのブレンドが重要だということだ。
僕の場合は前者の演繹的な部分が抜けており、以前はほとんど帰納法だけでストーリーを考えていた。このことに自覚的になり、演繹的なストーリー作りに集中することで自分の描いている作品の中にもドライブ感が出てきたので、やはり手塚治虫は偉大だったと改めて思った次第。
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